これまで患者と対面しての診療が原則だった医療に、新たにオンライン診療が認められました。以前から運用が始まっていたこの方法が、2018年度の診療報酬改定で一定の条件のもと、保険診療のひとつの方法として位置づけられるようになったのです。導入が進みつつあるオンライン診療の種類やメリットなどを紹介します。

 

オンライン診療が必要とされる背景

少子高齢化社会になり、医師の都市部への集中化と過疎地での医師不足が話題に上ることも少なくありません。医療は研究が進むなか、高度化と同時に専門化する傾向があります。旧来の、どんな症状でも診る「町のお医者さん」の姿からかけ離れつつある一面もみられ、今後はますます医師不足の傾向に拍車がかかると予想されます。

この状態を解消する方法のひとつとして注目されているのが「オンライン診療」です。スマートフォンやタブレットに代表される通信手段や診療機器の発達により、遠隔での治療の可能性が高まるなか、国もいくつかの制度改革を行なってきました。

1948年の医療法では第20条で「無診察治療等」を禁じています。これに対して国は、1997年から診療の補完的や役割として訪問診療導入の模索を開始。オンライン診療が医療法に抵触しないことを確認し、2018年に情報通信機器を用いた診療に関するルールづくりを行いました。

 

オンライン診療の種類

オンライン診療は主に「医師対医師」の間で行われる医療と、「患者対医師」の間で行われる医療の2種類に分かれます。

1. 医療行為のサポートとして行う(医師対医師)

医師と医師の間で行われるオンライン診療は「狭義の遠隔医療」とも呼ばれます。医師や歯科医師がより高度な専門医から診療上の支援を受けるために、患者の病理画像などを転送する形で実際に運用されていました。このタイプには、症例について専門的立場から遠隔で行うカンファレンスや、高度な知識の遠隔教育なども含まれます。

2. 医師と患者の間で医療行為として行う(患者対医師)

近年特に改善が進んだのが、主治医が患者に対して医療を提供する遠隔医療です。医師は、自宅など医療機関や医師から離れた場所にいる患者に対して、テレビ電話などを用いて診療を行います。伝送された心身の状態を示すデータをもとに診断を行い、服薬や治療などで患者の療養を支援します。リアルタイムに診療を行う以外にも、医療機器を用いた身体機能のモニタリングを行う場合もこのオンライン診療に含まれます。

 

オンライン診療のメリット

オンライン診療を行うメリットは以下のとおりです。

1. 画像診断・病理診断

レントゲン画像やCT、MRI画像などの読影や診断、病理組織の分析と診断がスムーズにできます。医師対医師、医師と医療機関で利用される際は特に、大きなメリットといえます。

2. 生体モニタリング

血圧や血糖値、呼吸や循環機能の数値を遠隔で把握することにより、糖尿病のような生活習慣病の管理や、喘息(ぜんそく)など呼吸器疾患の兆候をとらえることができます。また、高齢者の見守りや活動量の低下を把握することにより認知症の判断にも役立ちます。

3. 遠隔妊婦健診

産婦人科施設のない地域の妊産婦健診へのメリットも大いにあります。胎児の心拍数をモニタリングする機器を使用し、計測数値を医師に伝送。画像、テレビ電話などを用いて患者と医師がコミュニケーションをとることにより、妊婦健診をすることができます。1998年の岩手県での試みを契機に全国で実証事業が進められ「遠隔妊婦健診のガイド」が作成されました。

4. 在宅医療とオンライン診療

容態の急変や病状が悪化した際に対応が必要となる患者に比べ、在宅医療を受ける患者は密な医療を必要とせず、訪問看護師によるケアを中心とした病状の管理だけですむ場合も多いです。オンライン診療を取り入れることで、患者が自宅で療養することが可能になり、医療機関の負担も軽減できます。旭川医科大学では眼科の診療にオンライン診療を取り入れ、過疎地での手術支援から術後の管理支援まで、切れ目のない医療支援を行っています。

5. 遠隔看護

超高齢社会に突入している日本では、慢性疾患で自宅療養する人や、高齢者のひとり暮らしが増加しています。ICT(情報処理や通信に関する技術や設備・サービス)を活用することで、看護師が在宅療養者の数値のモニタリングや、患者とのコミュニケーションを通して健康管理を行うことができます。また、民間会社が主体となった見守りサービスなどの提供も行われており、離れた家族の健康管理を行えるメリットがあります。

 

まとめ

高齢化社会、医師の不足や偏在など、国内でみられる医療格差を是正する方法のひとつとして、また、医療の効率化により医療従事者の働き方改善につなげる方法として、オンライン診療は大切な役割を担うのではないでしょうか。

また、福岡市では医療戦略特区制度を活用して、服薬指導のオンライン化を視野にモデル事業を開始。在宅療養を行っている方の慢性疾患治療継続を主な対象に、遠隔服薬事業についての模索を行っています。

今後は医療行為だけでなく、地域住民や在宅で療養する患者の健康管理や健康増進への一助としてさまざまな方面からの運用も期待されます。オンライン診療は、今後の日本に必要不可欠といえるでしょう。

 

参考:

 

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