患者が医療機関に何を感じているかに関しては、さまざまな調査やレポートが存在するように、医療機関にとって非常に関心の高い項目のひとつです。医師や看護師などの医療スタッフは、忙しいうえに患者と接点が非常に多いのが特徴です。

しかし、患者の立場からすると医療スタッフの立ち居振る舞いによっては、信頼感が薄れると感じてしまうこともあるでしょう。その温度差を少なくするために、医療機関もいろいろな工夫が必要です。

 

医師が患者に伝えるべきことと

守秘義務について

医師は患者に対して、検査結果や病状について説明責任を果たさなければなりません。

しかし、かつて日本では、がんの告知に関して本人には告げず、家族や近親者にだけ伝えるケースもありました。病状説明は医師の裁量権に委ねられてきましたが、平成9年の医療法改正で患者への説明責任が明文化されました。また個人情報保護法によって、個人情報の厳格な管理・利用が定められたことも大きな転機になっています。

背景には、医療に関して患者はすべてを知る権利があるということが挙げられます。

  • 患者に対して何の検査を何のために行うのか
  • 検査結果はどうだったのか
  • 今後の治療方針はどのように行われるのか

医師は、患者に対してこれらを説明し、理解を求める必要があります。これをインフォームド・コンセントと呼んでいます。

一方、個人情報保護法において、医療機関は個人情報取扱事業者になるため、これらの情報を利用する同意を得て、厳格に管理・利用することが定められています。院内においてはもちろん、外部でも診療で得た個人情報を漏洩することは禁止されています。

こうした倫理的・法的コンプライアンスが遵守されているかどうかが、患者が信頼をおける医療機関の指標になるでしょう。医療側と患者が対等な立場で診療を行うことが、患者の信頼度を増し、さらにコミュニケーションが深まる基盤となるのです。

 

患者が医師に求めること

インフォームド・コンセントの徹底や個人情報保護法制定により、医療機関もハード・ソフト両面の改善を行っています。

施設面においては、診察室や検査室の会話が待合室のほかの患者に聞こえないよう、ドアの設置や個室への改装を行い、情報が流出しないよう工夫しています。

また、厚生労働省が3年に1度行っている「受療行動調査の概況(平成26年度)」によると、外来患者の項目別満足度調査のうち待ち時間について、約27%の患者が「不満」と回答しています。

これを解消するために、スマートフォンや電話で24時間予約ができるシステムの導入、患者の動線を見直すなど、満足度を上げる努力をしている医療機関も多数あります。

こうした努力の成果か、全体的な満足度は平成8年の調査に比べて徐々に向上しています。

一方、医療スタッフへの対応については、「医師による診療・治療内容」「医師との対話」「医師以外の病院スタッフの対応」について、満足度は50%を超えています。しかし、「不満」と回答した患者も6%程度いることも忘れてはいけません。

また、「医師以外の病院スタッフの対応」に比べ、「医師による診療・治療内容」「医師との対話」の満足度が若干低くなっています。医師と患者のコミュニケーションは診察時の会話に左右されるため、短い時間でいかに人間関係を構築するかが重要といえるでしょう。
満足度が上がれば口コミによる新患紹介も期待でき、経営基盤の安定化につながるため、重要事項ととらえる医療機関も多いのではないでしょうか。

 

患者のニーズを把握しよう!

これらの調査で、ある程度の傾向はリサーチできるものの、患者の希望はさまざまです。特に医療機関は国民皆保険制度により、貧富や生活の差に関係なく治療を受け入れるため、不満の原因は多種多様です。

しかし、患者は自分の命を預けている主治医に、不満を打ち明けることはほとんどありません。そのため医療機関には患者が感じている不満が伝わりにくい、という側面があるため、さまざまな試みが行われています。
一般的には意見箱やアンケートを行う施設が多いようですが、回収率が少ない、意見が片寄る傾向にあるなど標準化には至りません。その前に、患者動向を分析することで把握する方法を行ってみるのもよいでしょう。
たとえば、診察時間・待ち時間・患者数・新患率・再診率などを診療科目ごとに調査・分析するのです。これらのデータから、「患者の固定化が図られているか」「待ち時間の把握」などについてサンプリングが可能です。

取得したサンプルデータに加えて、電話・郵便・インターネットなどによる一般的な調査を加味して、患者の不満を絞り込むことが最善でしょう。特殊な例では、第三者によるミステリーショッピング調査(専門業者による覆面調査)という方法もありますが、コストがかかるのが難点です。

しかし、患者満足度を上げる前に着手できることもあります。それは、医療スタッフの満足度を上げることです。スタッフがやりがい・生きがいを感じている医療機関では、患者に対する態度や気持ちが前向きなので、患者も満足して帰ってもらえることにつながります。

 

患者満足度を上げるために

留意すべき点は、ココ!

医師も患者も同じ人間です。あらゆる状況ですれ違いや誤解というものは、必ず起きてしまうでしょう。しかし、だからといってその状態を放置するのではなく、少しでもポジティブに考えることで、お互いの距離は近づくはずです。

電子カルテの導入といった医療機器のデジタル化や、診察室・検査室などの内装を工夫することで、患者の動線や待ち時間を短縮することは可能でしょう。しかし、基本的にコミュニケーションは患者と一対一で行なうものです。
医師も診療をこなすことに手一杯で、余裕がないときもあるでしょう。長時間待たされた患者が診察室に入ってきたときに、イライラしているかもしれません。そんなとき、医師の「お待たせしてすみませんでしたね。」というひとことから始まれば、患者も「自分のことを心配してくれた」と思い態度も変わってくるのではないでしょうか。

こうした声掛けを、医師だけではなく他のスタッフも積極的に行うだけでも、患者の気持ちは安らぐはずです。このような行動は、医療機関全体で行わなければ効果がありません。そのためにも、積極的に接遇研修などを取り入れ、患者への声掛けを全スタッフが心がけることです。そうすれば、必然的に患者も気持ちよく接してもらえると感じ始め、満足度も向上していくでしょう。

トラブルのときこそ特に、このような対応が重要です。診察の順番や長い待ち時間などで不満の声が上がるかもしれません。しかし、誠意をもってきちんと説明すれば、納得してもらえることも多いでしょう。

 

患者とのコミュニケーションは

トップマネジメントのひとつ

医療スタッフと患者のコミュニケーションは、立場の違いから誤解されやすいケースが多いようです。また、医業経営の観点で見ても、ひとりの患者に多くの時間を割くことは不可能です。しかし、手間や時間がかかるこれらの問題を放置しておくと、結果的に病院経営に不利益をもたらします。コミュニケーションを図り、患者満足度を上げることが医業経営の重要な指標ととらえ、トップマネジメントのひとつと考えることが必要でしょう。

参考:

 

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