コンピュータが生活に浸透し、ひと昔前よりも快適に過ごすことができるようになっています。また、AI技術も進歩し生活機器として導入され始めています。医療の世界でも同様の流れは避けられないでしょう。医療におけるAIの現状と活用メリット・デメリットも踏まえた今後の方向性について解説します。

 

AI医療の現状

近年、AI技術が医療に活用されるニュースを目にする機会が増えています。例えば国内では、コンピュータ企業の開発した人工知能(AI) が、特殊な白血病患者を過去の論文データを参考にわずか10分で診断し、結果として患者の命を救うことにつながりました。

 

AI医療の導入事例

前述のコンピュータ企業が開発したAIの診断事例では、開発陣が、がん研究に関する合計2,000万件以上の論文をAIに学習させました。その結果、AIの解析能力が飛躍的に向上したのですが、その背景にはディープラーニング(人間が自然に行うタスクをコンピュータに学習させる手法のひとつ)という技術の導入があります。この技術によって、AIが自らデータの収集と学習を行うことが可能になり、解析能力の向上につながったのです。

アメリカでは、AIを用いて網膜眼底画像を解析し、心臓疾患リスクを発見するシステムの開発や、創薬分野にAIの活用を進めるなど、医療のさまざまな分野でAI活用範囲がますます広がっています。

一方、国内の現場レベルの医療ではどのようにAI技術の導入は進んでいるのでしょうか。
クリニックレベルではカルテ入力補助としてAIが使われており、風邪などの主訴や経過、オーダー、病名など入力が必要な項目をセットで入力できるようにするなど、医療関係者の業務の効率化や診断の補助に活用されています。その数はクリニック全体の2割にのぼり、今後さらに増える可能性も指摘されます。

また、がんセンターなどの医療機関では国内の症例データを活用したがんの類似症例診断システムを導入。類似症例が提示されることで疾患の候補がより具体的になり、医師が疾患を診断する際の参考になっています。

 

AI医療導入のメリット

以上の事例からわかるのは、「画像診断」「過去の論文との照合」「データの整理・入力」といった多くの医療データを扱う業務にAIが適しているということです。

最近ではコンピュータや画像診断装置の高性能化もあいまって、高品質の画像データがいち早く取得できるようになっています。また、患者数の増加などを要因として、医療現場での業務量が増大していることも見逃せません。

医療現場での適切な診断・治療を推進するためにもAI技術を導入し、労力がかかっている業務の効率化を図らなければならないといえるでしょう。

 

AI医療導入のデメリット

AI医療は処理スピードや正確性が向上してはいるものの、まだまだ発展途上の技術です。例えば、過去の医療データを参考にする場合、症例が少ない病気の場合には正確性に疑問が残ります。

ディープラーニング技術が発達したといっても、まだいくつもの症例の診断を同時に行うことはできません。また、機器やソフトの誤作動やプログラムのバグなどによる誤診の可能性もゼロではないでしょう。AI医療はまだ万能といえるわけではないのです。

 

AI医療の今後

厚生労働省では平成29年に開催した「保健医療分野におけるAI活用推進懇談会」の報告書のなかで、今後国内では以下の6つの分野で、AIを活用した取り組みを目指すとしています。

1.ゲノム医療

30億塩基対という膨大な量の情報を持つゲノム(遺伝情報)は突然変異することも多く、ビッグデータを解析することが得意なAI技術を活用することによって、診療方針の決定が速やかにできます。

2.画像診断支援

日本では諸外国と比べてCTやMRIといった機器の設置数が多く、前述のように医療現場でのAIによる画像診断の数は増え続けています。一方で、画像の重要なポイントを見落とす事例も指摘されています。膨大なデータの比較・診断をAIで行い、ダブルチェックとして画像診断支援もAIを用いて行うことで、画像診断時の見落とし率を減らし、より正確な診断につなげることができます。

3.診断・治療支援(検査・疾病管理・疾病予防も含む)

診療は、問診、診察、検査、診断、そして治療というプロセスから成り立っています。より正確で迅速な診断のためには豊富な医療知識は欠かせません。医療の世界では毎年数多くの論文が発表されており、最新医療の取得には時間を要します。

また、過疎地の医療では医師の数が不足していて、診療自体の効率化も求められます。AIを活用して論文からのデータの取得や診断の支援などを行っていくことは、医療を支えるうえで、とても大切であるといえるでしょう。

4.医薬品開発

医薬品の開発には研究から承認まで長い年月を要します。すでに発見されている原理も多く、新たに効果のある創薬ターゲットを見つけ出すのは容易なことではありません。また、前述のように論文などの情報も増え続けており、最先端の情報を把握しづらくなっていることも医薬品開発を困難にしている要因になっています。

こうした既存のデータをAIがディープラーニングで学習することにより、時間とコストを軽減した医薬品開発が可能になるでしょう。

5.介護・認知症

高齢化が進むなか、介護の分野は他分野の人材不足とは反対に、需要はますます増えることが確実になっています。介護ロボットのような、現場での負担を減らす機器の開発はすでに始まっていますが、今後も睡眠や排せつなどの監視補助や認知症の診断・治療にもAIを活用することが期待されています。

6.手術支援

手術など外科的治療が必要な病気の数は多いにも関わらず、若手外科医の数は減り続けています。一方、過疎地や医師の少ない地域でも外科治療が受けられるように、遠隔手術機器の開発が進んでいます。しかし、手術を円滑に進める要素である「触覚」の再現がされていないという問題があります。そこにAI技術を導入することで、操作する医師が触覚を持つことが可能になる新たな性能向上が期待できるとしています。

 

まとめ

AI医療はまだ黎明期で、診断の正確性や、人間のように同時に複数の症状を判断することは不得手といったデメリットがあります。しかし、ディープラーニング技術を取り込むことによって、画像や論文など多くのデータを自ら収集し学習することが可能になっています。

現状でも一部の医療現場では、医師の省力化を推進する手段のひとつとして、AI技術が少しずつ導入され始めています。少子高齢化や医師数の偏りなどがある現状を踏まえても、今後、医療の進歩や省力化にAI技術の活用は欠かせない存在です。

まずは医師の診療をサポートする存在として、長所を十分に活用できないか模索することから始めることが必要といえるでしょう。

 

参考:

 

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