Q.民間医療機関が新型コロナ専門病院を開設して病院経営は成り立つのでしょうか?

新型コロナウイルス感染症患者が今後、冬場にかけて増加するのを見据えて、当医療法人でも新型コロナの中等症患者受け入れに特化した専門病院を開設出来ないか検討しています。医業経営コンサルタント等、多くの方にも相談しましたが、新型コロナ禍で地域医療に貢献するのは否定しないものの障壁も多く、安易に進出するには経営的リスクが大き過ぎると聞きました。その理由を教えて下さい。

(地方都市 医療法人 副理事長 管理部長・57歳)

A.民間病院が独自の判断で開設し、経営していくことは難しいでしょう。

まず地域医療全体のメリットとしては、コロナ患者を「一括して診る」病院が開設されれば、軽症になった方をホテル等の療養室に移す等の機能分化と連携が図り易くなります。また、地域の一般病院が余力を持って、コロナ以外の患者に対応できますし、患者も感染を気にせず病院へ通院できるので、受診抑制も解消されるでしょう。感染疑いの濃厚な患者が救急搬送された場合は、当該専門病院に送れば良いため、地域で救急車が搬送先を見つけられない事態も改善されます。加え、保健所や帰国者・接触者相談センターの業務負担も解消され、地域医療的には良いことづくめのように見えます。

貴法人が新型コロナ専門病院を、どのように開設しようとされるのかが判然としません。現在の都道府県「地域医療構想」下において新病院を開設するのはほぼ不可能と考えられます。方法としては、貴病院を新型コロナ専門病院に転換するのか、新たに既存の病院を買収して新型コロナ専門病院に転換するしか選択肢はないように思います。

前者の場合、新型コロナウイルス感染症患者に特化することで、貴院の従来の機能はほぼ不全となり、新たに感染管理に熟練した医療スタッフの確保、業務負担増に伴う人件費の増大、感染防御に要するランニングコスト膨張等で、現行よりも経営が悪化するのは目に見えています。更に受け入れる新型コロナウイルス感染症患者の需要が分からないので、現状の病床で稼働率がどの位になるのかの予測がつきません。それは後者の場合も同じで、そもそも新型コロナ専門病院単体では、赤字経営に陥ると考えて頂いた方が良いでしょう。

民間が経営するのは難しいので、基本的に当該自治体が開設、あるいは経営の悪化した民間病院等を国や自治体が買収し、政策医療を担う公的病院として位置づけ、貴法人が自治体から新型コロナ「重点医療機関」として運営・管理を受託するような形態でなければ、経営は成り立たないと思います。ただ、当該自治体でそのような動きがあればの話で、現実的とは言えません。

中等症専門の病院は入院患者が重症化すると指定感染症医療機関に搬送し、治療で軽症化した場合はホテル等の療養施設に移行しますから、実際に長期入院するケースは少ないのです。勿論、緊急事態に備えて一定の非稼働病床を有していなければならないので、経営効率が悪いことはご理解ください。

他の病院の事例を見ても、病院本体とは切り離したプレハブ等の仮設病棟を作り、そこで新型コロナ患者を受け入れるのが現実的であろうと思います。非常事態とは言え、行政の許認可なしに病棟・病床を増やすことは出来ないので、民間病院が独自の判断で開設するのは難しいでしょう。

(2020年9月度編集)

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