クリニックに特化したクラウド型健診システムで健診業務の効率化を実現[クリニックアップグレード計画 〈システム編〉(34)]
日本人の死因の約5割は、がんや心臓病、脳卒中などの生活習慣病が占め、7大疾病の患者数は全人口の約15%と推定される。健康寿命の延伸には、生活習慣病の予防と早期発見がカギとなり、健康診断の重要性は高まっている。連載第34回は、クリニック向けのクラウド型健診システムを活用することで、健診にかかる業務の多くを自動化し、予防医療に積極的に取り組む都市型クリニックの事例を紹介する。
「CARNASクリニックの導入で課題だった健診業務 の自動化が実現できました」と語る山内さん
東京アスボクリニックは2020年、東京駅から徒歩圏内にある32階建てオフィスビル24階の静謐なフロアに開設された。院長の内山明好さんは浜松医大を卒業後、同大附属病院整形外科勤務などを経て、大手製薬企業で研究開発部門の担当役員として勤務した経歴の持ち主。それまで院長を務めていた港区のレディースクリニックを母体とし、病気の治療にとどまらず、バランスの取れた健康を取り戻すという新しい形の医療の実現をコンセプトに掲げる、次世代型クリニックだ。
治験への取り組みで医療に貢献
同院の特徴は、内山さんが長年製薬企業で医薬品の開発に携わっていたことから、専門の整形外科分野の膝関節症や腰痛症、変形性膝関節症に加え、婦人科領域の子宮内膜症、子宮筋腫、ワクチンなど治験を積極的に行っている点にある。治験を通じて医療の発展に寄与し、人々の健康で豊かな生活に貢献していくことを目指している。
もう1つの軸は健診業務だ。
「健診に力を入れているのは、患者さんが健康を見直すきっかけとなり、健診結果によって必要ならば早期に治療に結びつけることが何より大切と考えているからです。また、治験を実施するには、多くの被験者を集める必要があります。交通の便がよい立地にクリニックを構え、周辺企業に勤めるビジネスマンを中心に健診を行い外来診療も充実させながら、治験の被験者をリクルーティングしやすいメリットを生かして、治験と健診を両立させるクリニックにしていきたいと考えています」(内山さん)
クリニックに特化した安価な健診システム
同院の健診業務を支えているのが、1924年創業のシステムインテグレータである日本事務器が開発したクラウド型健診システム「CARNASクリニック」。
従来の健診システムは、大病院や健診センター向けの大がかりなものが多く、クリニックを対象としたものは少なかった。CARNASクリニックはクリニックの健診業務に特化して開発されたシステムで、日常業務で多忙なクリニックにとって大きなメリットとなる①健康診断結果報告書の作成機能、②低コストで導入可能、③強固なセキュリティ―などの特徴を持つ。結果報告書は様式5号形式、特定健診など複数パターンを用意。日本人間ドック学会の基準に基づき、判定を導くプロセスを自動化しているため、医師は確認とコメント入力に専念できる。
クラウド型のためサーバ機器の構築費用がかからず、毎月定額の利用料のみで導入でき、2カ月間無料トライアルプランも用意されている。
セキュリティ面では、「ガイドライン」に沿った安心・強固なクラウド上で運用、ユーザー側でシステムを改修する必要がなく制度改正や新機能を反映した最新バージョンを常に利用可能だ。ほかにも健診コース内容登録や検索リスト条件設定、自治体から受託する特定健診XML出力、協会けんぽCSV作成などの機能が搭載されている。
CARNASクリニックを導入する決め手となった理由について、内山さんはこう語る。
「大規模施設向けの健診システムは、日常診療と別のシステムとして運用する必要があるものが多く、コストもとても高いため、クリニックで導入しやすいシステムを探していました。CARNASクリニックはクラウド型なので安価にもかかわらず、結果報告書のアウトプット機能が搭載されていて、フォームもカラーで見やすいものでした。また電子カルテや検査会社から取り込む検体検査データがすべてオンラインで連携できるということで導入を決めました」
図1健診結果報告書の出力イメージ:カラーでレイアウトも見やすく、日本人間ドック学会の基準に 剃った自動判定機能も搭載。患者が健康管理に活用できる
図2 健診結果入力画面イメージ: 検体検査データを取り込めるため、 医師は確認と初見の入力に専念で きる。受診コースもプルダウンで選 択可能
専任スタッフでなくても対応可能な操作性
内山さんはシステム運用における日本事務器の手厚いアフターサービスも評価する。
「導入時に操作トレーニングをしてもらい、今では専任のスタッフでなくてもこなせるようになり、作業の平準化ができました。こちらの要望にもすぐに対応してくれるので、安心して運用できています。また治験では安全性の確保から、多くのプロセスを踏む必要があり、標準業務手順書(SOP)が欠かせませんが、同様にCARNASクリニックを健診のSOP作成に利用することで健診業務の効率を上げ、ミスも少なくすることができました」
健診により経営の安定性が増す
新型コロナウイルスの流行拡大以降、地域のクリニックの多くは患者減に苦しめられている。今後のクリニック経営の観点からも、定期的な来院が見込める健診業務への取り組みは重要になる。しかし情報管理や結果報告書作成の手間が、医療リソースの限られるクリニックにとって積極的な取り組みへの足かせとなっている現状がある。
「CARNASのような導入ハードルの低い健診システムを活用すれば、予防から治療までトータルで健康を管理することが可能になります。健診をきっかけにかかりつけとなるケースも期待できるため、経営の安定性も増します。健診システムで多くの作業を自動化することにより、医師やスタッフの負担を増やさずに健診業務に取り組むことができようになります。当院でも多くの方に健診を実施し、予防医療を提供するとともに治験の被験者を集め、医療の発展に貢献していきたいと考えています」(内山さん)