CARNAS &gで健診システムをクラウド化でき、災害時でも地域住民の健康を守れます
熊本市の地域医療を担う江南病院は、日本事務器のクラウド型健診システム「CARNAS &g(アンジー)」を導入しました。その経緯や狙い、期待する効果を事務部長 上野 素春氏、副事務部長 木脇 良太氏、健康管理室 副主任 保健師 森田 愛氏、健康管理室 保健師 津留 美沙子氏、健康管理室 事務 伊南 摩紀氏にお伺いしました。
お客様プロフィール
一般財団法人杏仁会 江南病院
熊本市エリアの地域医療を支える総合病院。昭和26年設立。病床数は198床。病棟は一般病棟、地域包括ケア病棟、回復期リハビリテーション病棟、医療療養病棟、結核病棟の5つを有する。また、患者・利用者向けにAI問診サービスをホームページ上で令和4年に提供開始するなどの先進的なIT活用も積極的に進めている。あわせて、併設の老人保健施設フォレスト熊本を拠点に、在宅での看護介護支援と介護予防にも注力している。
院長:瀬戸口 敬介氏
所在地:熊本県熊本市中央区渡鹿5丁目1-37
設立:昭和26年12月
職員数:317名(令和6年1月1日現在)
診療科:内科、整形外科、呼吸器内科、消化器内科、循環器内科、リハビリテーション科、リウマチ科、放射線診断科、アレルギー科(呼吸器)、脳神経内科、麻酔科、形成外科、糖尿病・内分泌内科
病床数:198床
病床区分:一般病棟 63床/地域包括ケア病棟 40床/回復期リハビリテーション病棟 40床/医療療養病棟 40床/結核病棟 15床
懇切丁寧な対応の健診で利用者から高い満足度を得る
江南病院の特色や地域における役割をお聞かせください。
上野氏:当院は地元・熊本に密着し、地域住民の皆様の健康を守ることを使命とする病院です。「病気を診るのではなく、人を診る」という考え方のもと、患者様の自宅での日常生活までも含めて健康を守ります。
また、当院では「正確・迅速・人間愛」を基本理念に掲げています。医療サービスの提供にあたり、迅速さと正確さはあたりまえです。それを大前提に、人としての温かみや優しさを重視しており、患者様一人ひとりに向き合い、寄り添った医療を心がけています。
貴院で実施している健康診断(以下、健診)の概要と特色をお聞かせください。
森田氏:健診センターのような独立した施設ではなく、外来の一つの部門にて健診を行っています。利用者数は年間1850前後です。
当院の規模などの関係から、健診で1日に対応できる人数は限られていますが、そのぶん利用者様一人ひとりに丁寧に対応できるのが特色です。例えば、次に受ける検査の場所へ迷わずたどり着けるよう、密にご案内するなどです。
また、外来と同じ施設内で健診を受けるので連携しやすく、必要な方に対して受診の調整などを行っています。これらの特色から、利用者様からのアンケートでも高い満足度の評価をいただけており、当院で何年も続けて健診を受ける利用者様がたくさんいます。
医療サービスとワークライフバランスの向上にITを活用
職員のワークライフバランス向上にも長年注力されていますね。
上野氏:はい、職員が働きやすい環境整備には約20年前から積極的に取り組んでいます。その一環として、現場負担のベンチマークに基づいた人数配分をはじめ、徹底した効率化や適切な勤怠管理などによって、医療サービスの質を保ったまま、職員の総労働時間短縮に努めています。
伊南氏:実際に大きな成果を挙げられています。令和5年度は、職員1人当たり1ヵ月間の残業時間数は0.40時間、有給休暇取得率は82.39%でした。令和4年には「熊本市子育て支援優良企業」に認定されました。
また、残業時間数などのデータは当院のホームページで公開しています。勤務関係以外でも、外来入院数や手術件数などの診療実績はもちろん、情報システムで採用している製品/サービスに至るまで、幅広い情報公開にも長年力を入れています。
ITおよびDXへの取り組みをお聞かせください。
木脇氏:質の高い医療サービスの提供や職員のワークライフバランス向上を達成するには、業務効率化や適切な情報共有などを支援する医療情報システムの充実が不可欠という基本姿勢のもと、歴代の院長主導でIT化を継続的に進めています。電子カルテをはじめ、看護支援システムや医事システムなど各種部門システムを導入しています。医療安全に関しては、全ベッド離床センサー付とし、三点認証システムなどを導入して充実を図っています。職員向けにもeラーニングシステムを取り入れ、働きやすい環境整備にITを活かしています。
上野氏:システム全般の方針はクラウドを基本と定め、オンプレミスで構築したシステムのクラウド化に着手したところです。主な狙いはBCP対策です。特に当院は川沿いに建っており、かつ、サーバー室が1階にあるため、河川氾濫によるシステム水没の恐れが高い条件下にあります。他にも地震などの大規模災害発生時でも、患者様のお薬手帳やカルテが確認できるなど、医療行為を継続するにはシステムのクラウド化が大変有効でしょう。
「CARNAS &g」の導入で健診システムをクラウド化
健診システムに「CARNAS」シリーズを導入していますが、経緯や導入効果をお聞かせください。
木脇氏:最初は平成30年にオンプレミス版を導入しました。選定にあたり 、医療事務システム(以下、医事システム)とのデータ連携が重要な条件でした。当院は医事システムに日本事務器の「MAPSIBARS/C」を用いており、親和性の高さからCARNASを採用しました。
森田氏:健診の現場では以前、利用者様の情報や検査結果などのデータをすべて手入力し、報告書なども手作業で作成していたので、入力・作成とチェック、修正、更新に多くの労力を費やしていました。それらの業務がCARNAS導入で飛躍的に効率化されました。
津留氏:当時は日中に健診業務を行い、データ入力などはそのあとに行っていたため残業が増えがちでしたが、CARNASによって残業が劇的に減った感動は大きかったですね。
その後、令和6年4月から、クラウド版である「CARNAS &g」を導入しましたが、経緯をお聞かせください。
上野氏:当院のシステムは原則7年で更改と定めています。次期医事システムの検討を始めたころ、ちょうど日本事務器からパイロット病院の提案があり、1年前倒しで導入しました。当院システムのクラウド化の第一弾になります。現在は実務で利用するなかで、機能改善・追加の要望を出しています。
現時点でCARNAS &gの重宝している機能や得られている導入効果を教えてください。
森田氏:操作方法などの質問をオンラインでできる機能が非常に便利ですね。従来は電話やメール、対面などで質問していたので、どうしても時間がかかっていました。オンラインなら質問すれば即座に回答が得られるため、業務スピードをアップできます。
それに、以前はどのような回答が得られたのか、つい忘れてしまい、同じ質問を繰り返してしまいがちでした。CARNAS &gは問い合わせの履歴がクラウドに蓄積され、いつでも検索・閲覧できるので、同じ質問を繰り返えさなくなりました。他の職員にもナレッジとして共有でき、業務効率化に直結します。
津留氏:メモ機能もよいですね。利用者様に注意事項などの情報が添えられるケースが多いのですが、それを入力して画面上で閲覧・共有できるのはありがたいです。
システム面でクラウド化したことによる効果もお聞かせください。
上野氏:まずは当初の狙い通り、BCP対策を強化できました。水害などが発生しても、医療をより継続できるようになりました。
木脇氏:さらにシステム運用管理が大幅に改善されました。当院には、情報システムの専任者がおらず、私たち事務部の職員が限られた人数のなか、兼任で運用管理を担っており、少なくない負担を強いられていました。クラウド化したことで、その負担が皆無になりました。しかも、新制度へのシステム対応なども、クラウド側で行ってくれて、私たちの負担はないのでとても助かりますね。
上野氏:セキュリティを強化できた点も大きいですね。攻撃を受ければ医療を継続できなくなってしまいますが、オンプレミス環境にて自前で強化するには、どうしても限界があります。今回は当院からのネットワーク接続の段階から、日本事務器がクラウド環境に可能な限りのセキュリティ対策を施してくれました。ランサムウェアなどの脅威が高まる昨今、とても心強いですね。
Web予約機能による利用者のさらなる健康促進に期待
CARNAS &gは令和6年10月にWeb予約機能をリリース予定ですが、期待をお聞かせください。
津留氏:電話予約だと、口頭でお聞きした情報を入力する手間がありますし、お名前などの聞き間違いのリスクも常につきまとうので、毎回とても神経を使います。Web予約なら利用者様自身が入力するので、そういった手間やリスクが軽減されることを期待しています。
伊南氏:予約時間の確認などがWeb上でいつでも即座にできるので、利用者様にとって便利ですし、私たちも人手での対応が不要になって楽になりますね。また、今後の展開として、紙で郵送する必要がない書類をWebで利用者様に渡せるようになれば助かります。今は健診結果の報告書などは1枚ずつ印刷し、封筒に入れて郵送していますが、その手間やコストが不要になり、入れ間違えの恐れもなくなるので、業務を効率化できるでしょう。
Web予約機能は他にも利用者様に提供できるメリットが多そうですね。
森田氏:はい、将来的に健診の予約から結果まで、一連の流れがWeb上で完結するのは画期的です。利用者様は自身のポータルで過去の健診の結果が経年で見られて、私たちもその情報から、個々の利用者様に合った生活習慣改善の提案などが行うことが可能になります。
津留氏:利用者様は健診を受けて結果が出て終わりではなく、生活習慣改善などの気づきを継続して得られることがペーパーレスで行えるようになるとよいですね。利用者様にはまた来年も当院で健診を受けようと思ってもらえるでしょう。
クラウド化をさらに進め、自然災害に強い医療体制に進化
Web予約機能以外にも、CARNAS &gへの期待があれば教えてください。
森田氏:そうですね、オンラインの問い合わせは近い将来、AIで自動回答が得られるよう企画中だと聞いており、有人サポート時間外でも問い合わせできることに期待しています。
最後に、今後の展望をお聞かせください。
上野氏:先ほど申し上げた各システムのクラウド化を医事システム以外に広げていきます。電子カルテなど主要システムを優先してクラウドへ移行し、自然災害時などでも医療を継続できる体制をより一層強化していきます。
並行して、システム間連携も進めていきます。治療や健診などの情報が一元管理できれば、私たちはよりよい医療サービスが提供可能となり、患者様・利用者様はより健康を守ることができると考えています。