長引く新型コロナの感染拡大は、クリニック・病院経営に大きな影響をもたらしています。昨年12月に都市圏に2度目の緊急事態宣言が出されており、予断を許さない状況が続いています。その影響からか、昨年4月に続いて再び患者の受診控えが生まれているとの声も聞きます。また、新型コロナの感染症対策として、マスクの常時着用、手指消毒、3密を避ける行動などが一般化しており、その結果、インフルエンザやかぜ症候群などの季節性疾患が劇的に減っています。いま、患者の受診数がなかなか増えない状況で、クリニック・病院はどのような新たな行動を起こしていけば良いのでしょうか。

ウィズコロナで新規患者が減少した

 クリニック・病院の外来患者数は、新規患者と再来患者の合計で成り立っています。ここでいう新規患者とは、初めてクリニックに来院された患者を指し、再来患者とは過去に1回でも来院したことのある患者を指しています。
新型コロナウイルス感染症が蔓延する以前の「ビフォーコロナ」では、当然患者の受診控えも起きておらず、かぜ症候群やインフルエンザなどの季節性疾患は、冬になると毎年、程度の差はありましたが流行していました。その結果として、新規患者は一定数、クリニック・病院を訪れていました。多くのクリニック・病院は、「新規患者の獲得」を戦略の柱にしていたのではないでしょうか。一定程度生まれる新規患者のパイの取り合いをしていたと言えるでしょう。
 しかしながら、「ウィズコロナ」になり、緊急事態宣言に伴う患者の受診控えや、徹底した感染症対策による季節系疾患の減少は、新規患者の増加にブレーキをかけてしまっているように感じます。クリニック・病院がホームページのSEO対策や看板などによる、「患者へのPR活動」に力を入れてもあまり影響しない時代となっているのです。

新規患者ではなく再来患者に注目する

再び新規患者が戻って来るかは、今後ワクチン接種などの効果でコロナが収束し、「アフターコロナ」となっても、しばらく感染予防意識が高い状況が続くと予想されますので、新規患者が少ない今と同じ状況が続くのではないでしょうか。
 そのような状況においては、新規患者ではなく再来患者に注目する必要があります。クリニック・病院が、一定の患者数を確保し続けるためには、「患者のリピート率」が大切な指標となると考えるからです。現在のような「新規患者の減少時代」は、再来患者をいかに循環させるかを戦略の柱とする必要があるのです。

画像に alt 属性が指定されていません。ファイル名: column_banner_b.png

再来患者をどう増やせば良いのか

 さて、再来患者はどのように増やせば良いのでしょうか。再来患者を増やすためには、患者の「受療行動」に注目する必要があります。受療行動とは、患者が医療機関を受診する際の行動のことで、様々な要因がその行動に影響をもたらします。つまり、患者がリピートしない理由をひとつひとつ検討していく必要があるのです。

患者は「必要性」が分からない

患者は次回来院する必要があるかどうかは通常分かりません。医師から具体的に「1週間後に来てください」と言われればまだしも、「次回来てください」という言葉では強制力もほとんど働らかず、もし状態が良ければ、自己判断で「治った」と思って来院しないかもしれません。まずは、次回来院の「目安となる日時」をしっかり伝える必要があるのです。また、最近導入が増えてきている「予約システム」を活用して、次回の予約を取ることで、再受診率を向上させることが可能です。一般の傾向として、医師と約束した時間には、大きなトラブルさえなければ、来院しようとするものです。本当に次回来て欲しい患者には、しっかりと次回の受診の必要性を伝える必要があるのです。

患者は「不満」がある

 また、患者の再受診を遠ざける心理に、「不満」があります。様々な患者アンケートによると、クリニック・病院に対する不満の上位は、「待ち時間」と「接遇・対応」という結果がほとんどです。例えば、過去に長く待たされた経験があったり、医師やスタッフの対応に不満があったりすれば、自然とクリニック・病院への足は遠のいてしまうのです。もしかしたら、他のクリニック・病院を受診してしまっているかもしれません。まずは、患者の「不満」の声を満足度調査などから集め、ひとつひとつ解消していくことが大切です。

患者は「不安」がある

 新型コロナウイルスは、クリニック・病院に受診することへの「不安」を増大させています。クリニック・病院は感染リスクが高い場所と考えているのです。このこともクリニック・病院への足を遠のかせる原因となっています。クリニック・病院はホームページなどで、感染予防対策の取り組みをしっかり伝え、「安全な場所である」というPRをし続ける必要があるのです。せっかく、感染対策として様々なシステムを導入しても、そのことが患者に伝わっていなければ、患者の不安はぬぐい去ることができません。

患者は「易(やすき)に流れる」

 「易きに流れる」という言葉があるように、患者は受診する際に楽なクリニック・病院を「受診し易い」と感じます。この楽という言葉は便利と言い換えても良いでしょう。現在のように、インターネットやスマホなどデジタル化が進んだ社会では、便利であるかどうかはクリニック・病院の重要な選択要素となっています。現在の受診のフローが、本当に患者にとって利便性高く設計されているかを一度見直してみると良いでしょう。医療機関数が増加し、常に競合するクリニック・病院が存在する現状では、ライバルと比べて便利かどうかを確認することは重要です。

患者の循環構造

 「患者が定期的に受診する」ような仕組みづくりも大切です。例えば、健康診断をきかっけに来院された患者の流れを考えてみましょう。健康診断で病気の可能性を指摘され、クリニック・病院を受診し、精密検査の結果、慢性疾患が発見されたとします。慢性疾患とは、高血圧症や糖尿病などのことです。このケースの場合、定期的な受診が必要になり、治療として定期検査や指導、処方などが必要になります。
ここでお分かりのように、「健康診断」は慢性疾患を発見するための入り口となるのです。つまり、再来患者を増やすためには、「慢性疾患の患者を発見できる体制」が必要なのです。たとえ精密検査の結果、大きな疾患が見つからなかったとしても、年1回の健康診断を受診いただくことで、患者との定期的な継続関係が結べることになるのです。
この定期的な継続関係は、今風の言葉でいえば「エンゲージメント」となります。エンゲージメントとは思い入れ、愛着と訳されますが、患者が愛着を持って定期的にクリニック・病院に来院する仕組みを構築する必要があるのです。

画像に alt 属性が指定されていません。ファイル名: column_banner_b.png

患者との良質な関係づくり

 このように患者が再び来院するかどうかは、「患者とクリニックとの関係性」にかかっています。関係性が高ければ高いほど、リピートの確率は高まっていきます。関係性を高めるためには、定期的にクリニック・病院からメッセージを送れるようにする必要があります。クリニック・病院はいつでも「あなたのそばで見守っている」というメッセージを出し続けることで、患者の頭に「かかりつけ医」として認識されることでしょう。クリニック・病院が定期的に情報を発信するためには、LINEなどSNSの活用が有効です。プッシュ的に利用できるメディアを活用すると良いでしょう。

執筆者プロフィール

MICTコンサルティング株式会社 代表取締役 大西 大輔 氏

2001年一橋大学大学院MBAコース修了。同年医療系コンサルティングファーム「日本経営グループ」入社。02年医療IT総合展示場「メディプラザ」設立(~2016閉館)。16年コンサルタントとして独立し「MICTコンサルティング」を設立、現代表。19年一般社団法人リンクア(医療・介護教育)を設立、現理事。
過去3000件を超える医療機関へのシステム導入の実績に基づき、診療所・病院・医療IT企業のコンサルティングおよび講演活動、執筆活動を行っている。