医療広告はどこまでがセーフ?広告規制をクリアするために知っておきたいこと

 駅の看板が医療機関の広告で占められていた懐かしい時代もありました。現在でも電柱の看板、電車や駅のホームから見える大きな看板は健在ですが、広告の手法は、インターネットが普及してからは変わってきているでしょう。 しかし、最近では医療機関でもインターネットによる有料広告が目立つようになり、医療自体からかけ離れた広告に規制がかかることとなりました。なぜここにきて医療広告の規制強化がかけられたのか、その背景や現状についてまとめます。

医療機関における宣伝広告について

 駅や電柱の看板に必ず登場する医療機関の広告。都心ではかなり減ってきていますが、地方の駅ではほとんどが医療機関の広告の場合もあります。それだけ地域に密着した産業ですが、医療機関の有料広告に規制があることを知らない人もいるでしょう。 1960年代に制定された日本の医療保険制度は、国民全員の健康を医療保険でカバーしようという、国際的に見ても画期的な制度です。診療報酬と呼ばれる医療費は日本全国どこに行っても同じ金額であるため、国民にとっては安心なシステムです。 医療保険制度が整備されているなか、「医療」という専門性の高いサービスは、場合によっては人の命にかかわることもあるため、その特殊性が逆に自由な広告の足かせになっています。

インターネットの発達により、規制の岐路に立った医療広告

 医療機関が開業する際には、宣伝や広告をするためにパンフレットや広告看板などを作成します。その代替として登場したのがインターネットのホームページです。 インターネットは、表示スピードが低速な電話回線から、光ケーブルのような高速表示ができるインフラが整備されたのをきっかけに急成長しました。また、通信環境の発達により、パソコンから携帯電話、スマートフォンでもホームページを閲覧できるようになりました。 このような環境下で医療機関のホームページは普及してきました。医療広告の宣伝広告に関して規制をしていた厚生労働省も「ホームページは広告とみなさない」として自主規制に任せていたのです。

 しかし、ここ数年で自費診療の美容系クリニックが乱立し始めました。自費診療の医療機関は医療広告規制に該当しないため、民間企業と同じように有料広告を利用することが可能です。インターネット環境が変化するなか、ウェブマーケティングを利用した過剰な広告が増えたことに比例して、美容医療分野の利用者から行政等へのトラブル相談が増加しました。 そこで厚生労働省は、新たな医療広告規制が必要と判断しました。誤認されやすい施術前後の写真や、主観性の高い利用者の体験談などの表示を規制の対象とした、医療広告ガイドラインを平成30年に策定したのです。

平成30年に改正された医療広告ガイドラインの概要

 今回の医療広告ガイドラインの基本的な考え方は、人間の生死を左右する専門サービスである「医療」本来の考え方に立ち返ることです。 インターネットにおけるホームページでの過剰・誇大・虚偽などを排除し、消費者に本来の医療サービスを知ってもらうための基準をガイドラインという形にしています。 従来は、過剰・誇大・虚偽の記事をホームページに掲載していても、規制対象外でなおかつ罰則規定がなかったため、利用者のトラブル・相談件数が増加しました。

 今回の改正における規制は、「医療法」ではなく「景品表示法」「薬機法」という法律の対象になります。認可されていない成分の入ったサプリメントの販売、あるいは誤解を生む画像の掲載などを是正する内容になっています。 規制の対象となるのは、自費診療医療機関だけではなく、保険適用医療機関も同様です。認定医・専門医など資格名を表記する際、発行者が、厚生労働省が医療広告を許可している団体であれば問題ありません。しかし、指定外の任意団体が発行する認定医・専門医や認定施設などの表示は規制の対象です。また、施術・手術などの有効性を強調した表現も広告が禁止されています。 景品表示法・薬機法などの法律に違反している場合、各都道府県の担当者から行政指導・是正命令などの連絡があるのが一般的ですので、注意が必要です。

 これらの表示が妥当かどうか、どこまでが規制内外か不明な場合は、都道府県ごとに開設されている相談窓口へ、事前に相談することも一考です。(下記参照) 各都道府県、保健所設置市及び特別区における医療に関する広告の窓口一覧 また、8月10日に厚生労働省から事務連絡「医業若しくは歯科医業又は病院若しくは診療所に関する広告等に関する指針(医療広告ガイドライン)に関するQ&Aについて」が発出されました。こういったものも参考にしながら広告を検討する必要があるでしょう。

医療機関は、どこまで宣伝できる?

 医療機関の広告で原則認められているのは、医師名・診療科名・提供される医療の内容など限定的です。一方、医療機関はより魅力的な記事や広告で患者に来てもらいたいと考えているはずです。 そこで問題になるのが「どこまでの表現・表示が認められるのか?」という点でしょう。 今回の医療広告ガイドラインで問題になっているのは、下記の3点です。

  • 過大、過剰な表現
  • 虚偽の表現
  • 薬機法・景品表示法への抵触

これらをそれぞれ解説していきましょう。

1. 専門医・認定施設の表示(過大、過剰な表現)

 「○○認定医・専門医」という資格名の表示を使用している医療機関は非常に多く見受けられます。資格に関しては、厚生労働省が認可しているすべての認定医・専門医は、表示することが許可されています。 しかし、それ以外の任意団体が発行している認定医・専門医の資格は、過大広告に該当する可能性があります。厚生労働省のホームページを確認し、該当しているか確認するとよいでしょう。

2. 診療科目にない診療の表示(虚偽の表現)

 最近増えている歯科医院での「インプラント」「審美歯科」という表現は、正式な診療科目ではないため規制の対象になります。自費診療のため、医業経営にとって有効なサービスですが、今後のガイドラインの推移を見守ることが求められます。

3. 施術(手術)前後の比較画像・利用者の体験談(薬機法・景品表示法への抵触)

 特に美容系医療機関に多い表示方法です。主観性が高く消費者の誤解を生む可能性があるため、規制の対象になります。 今回の改正での大きなポイントは、上記の3点です。他院との差別化のためによかれと思っても節度が大切です。記事を公開・投稿するときには、十分注意しましょう。

広告とウェブマーケティングを適切に利用しましょう

 医療機関といえども、立派なビジネスです。患者を集めるため、あるいは自院の医療サービスの良さを知ってもらうために、ウェブマーケティングを積極的に利用する必要に迫られています。 過剰な広告に頼るのではなく、適切なマーケティング施策を検討し実施することが重要です。広告やマーケティングをうまく活用することで、地域住民だけでなく、多くの人に自院を知ってもらうことができるのではないでしょうか。

参考:

無料メールマガジンご案内

クリニックや健診施設の皆さまに役立つ情報を随時お届けします!

購読する

資料・お問い合わせ