医療IT最前線 第45回 患者、医師、スタッフが幸せになる仕組み

60人を超えると電子カルテ入力が負担に感じるように

電子カルテを導入した医師から、「導入後に1日当たり外来患者数が60~80人を超えたころから、急に電子カルテ入力を負担に感じるようになった」という話を聞きました。

1日の診療時間を8時間、外来数を60人とすると、患者1人にかけられる時間は8分となります。この8分の間に診察や処置、検査、患者説明に加えて、カルテ作成を実施すると考えると、医師1人で行うには時間が足りないのです。その結果、診療時間中にカルテ作成の時間が取れなくなり、外来患者の待ち時間が少しずつ延びていくのです。

また、患者の増加とともにカルテの記載量が減少し、カルテ作成が診療時間内に完了しないこともあります。診療終了後にカルテを見直し、追記・修正する必要があるため、遅くまで残業が発生しているという話さえ耳にします。

電子カルテは紙カルテより速くなるか

診療所における電子カルテの普及率は4割に近づいてきました。

普及が進むにつれて「電子カルテをどのように効果的に活用するか」を考える時期になったといえます。 電子カルテ選びのポイントとして、多くの医師が「操作性」を第一に挙げます。このニーズに応えるため、多くの電子カルテメーカーが操作性を第一の開発ポイントに据え、日々改善に取り組んできました。

しかし、これまで慣れ親しんだ「紙」と「ボールペン」よりも電子カルテの方が使いやすくなければ、「電子カルテを入力しながら患者と今まで通り向き合えるのか」という問題を解決できません。電子カルテは紙カルテより(作製時間が)速くなければ効率化が図れないのです  

病院では先行的に「医療クラーク」導入が進む

そこで徐々に導入が進みつあるのが、医師の代わりに電子カルテの入力を医療クラークにしてもらうという試みです。勤務医の負担軽減を目的に、病院では「医師事務作業補助体制加算」という診療報酬点数が設定されています。そのため、病院では積極的にクラークが活用され始めています。 現在の診療報酬では、同加算の算定が診療所ではできないため、クラーク活用は特定の診療科が中心となっていますが、これからの普及が期待されています。  

クラーク運用は、患者、医師、スタッフが幸せになる仕組み

さて、クラーク運用によって医師のどの業務が負担軽減できるのでしょうか。その主な効果として以下の3点が考えられます。
(1)電子カルテの入力や紹介状など書類の下書きを代行する
(2)診察終了直後にレセプト点検業務を行うことができ、見直し業務がなくなる
(3)看護師や受付スタッフと医師の間で情報共有がスムーズになる

上記3点によって、医師の負担が軽減することで患者と向き合う時間も増え、さらには患者の待ち時間も減少するでしょう。また、スタッフも新たに医療クラークという役割を担うことで、やりがいをさらに見いだせると考えます。クラーク運用は、患者、医師、スタッフが共に幸せになれる仕組みといえるのではないでしょうか。  

(2018年06月01日)


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