医療IT最前線 第47回 タブレットとクラウドの活用で変わる医療の未来

厚労省は2010年、電子カルテの外部保存に関する通知を一部改正し、医療分野におけるクラウドコンピューティング(以下、クラウド)の活用を解禁しました。これにより診療録などをクラウドへ保存することが可能となりました。また、時を同じくしてアップル社が「iPad」を発売し、タブレットの普及が始まりました。

この2つの出来事を境に医療分野におけるIT化は、これまでの「業務効率化を主体とした活用」からICT化という言葉にあるように、「コミュニケーションツールとしての活用」へと、新たなステージに移ったといえます。

クラウドの普及がもたらした変化

「医療分野におけるクラウド解禁」は、医療現場に以下の4つの変化をもたらしています。

1.クラウドバックアップ
2011年の東日本大震災を契機に電子カルテのデータ管理方法が見直され、クラウド技術を活用した遠隔地でのバックアップが増加しています。これにより、データ保全が医療の現場の手を離れ、企業が管理する時代になっています。
2.地域連携ネットワーク
クラウド技術を地域連携に活用することで、安価なネットワーク構築が可能となり、その普及を後押ししています。2025年の地域包括ケアシステムの完成に向けて、さらに急ピッチで進むことが予想されます。
3.在宅医療
クラウド技術を活用した在宅分野におけるコミュニケーションツールが相次いで登場し、医療機関間の情報連係や医療従事者だけではなく、介護従事者を含めた多職種間での情報共有が進みつつあります。在宅向け電子カルテ、多職種連携システムなどが定着してきています。
4.ソフトからアプリへ
電子カルテや診療予約システムなどのソフトが、年を追うごとにクラウドでの提供が可能になっています。今後、プラットフォームとそこで動くアプリという流れになっていくことでしょう。

タブレットの普及がもたらした変化

iPadが登場した時期からタブレットの普及が急速に進み、いまでは医療現場でもさまざまな活用事例が報告されています。

1.問診端末と再来受付端末
タブレットの携帯性と、誰でも直感的に使用できるという特性から、問診端末や再来受付端末として使用するサービスが多数登場し、その導入が進んでいます。特に問診端末は百花繚乱の様相を呈してきました。
2.診療サポート端末
患者説明の際に、レントゲンや内視鏡などの画像をタブレットで表示して利用します。患者自らに画像を操作してもらうことで、身近に感じて興味がわきやすく、患者とのコミュニケーションが活発になるという事例が報告されています。
3.検査入力・指示確認端末
コメディカル(医療スタッフ)が医師から依頼された処置やリハビリ、検査を行う際にも、タブレットが活用されています。処置やリハビリ、検査をしながら端末を操作することが可能となり、効率性が向上しています。
4.在宅医療での情報管理端末
在宅医療では患者宅など出先で利用することが多く、携帯性・操作性の良さからタブレットの活用が進んでいます。在宅医療の現場におけるタブレットへの期待は高く、最もその活用が進んでいる分野だといえます。 このようにクラウド技術とタブレットの2つのイノベーションは、医療の現場でさまざまな変化を生み出しています。さらには、血圧計や体温計、体重計、歩数計などパーソナルヘルスケアシステムとの連携が進むことで、医師と患者との間で「積極的なインフォームドコンセント」をもたらすことが予想されます。

クラウドとタブレットが医療にどのような変化をもたらすのか

最後にクラウドとタブレットが、医療に今後どのような変化をもたらすのかを考えてみましょう。

1.コスト
クラウドとタブレットはどちらもシステム導入時の価格(イニシャルコスト)を低下させていますが、課金方法自体も変化しています。今後は多くの医療機関でシステムがシェア(共同利用)され、使用した分だけ請求される方式へと変わっていくと予想されます。
2.利用シーンの多様化
医療の現場での活用は今後ますます活発になり、「現場発想」(マーケットイン)によるシステム開発がさらに進んでいくことでしょう。医療機関が考えたシステムが広く普及されるという時代が来るかもしれません。2018年4月の遠隔・オンライン診療の本格解禁はそういった流れを後押ししそうです。
3.ICTを活用したコミュニケーションの一般化
ICT活用のハードルがさらに低くなり、タブレットを医療・介護職員が1人一台保有し、スマートフォンを操作するのと同様、手軽にコミュニケーションが充実することが期待されます。現在、コミュニケーションの重要性が強く要望されている調剤薬局においても活用の波は進むことが予想されます。

(2018年07月02日)

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