Q.労働条件通知書をメールで送ってもよいのでしょうか。
労働条件の明示について、電子メール等での明示が可能になると聞きました。労働条件通知書をメールで送ってもよいのでしょうか。注意事項など詳しく教えてください。
従業員が入社したときなどに明示する労働条件については、書面での明示が原則ですが、電子メールやFAXでの明示が可能になると聞きました。労働条件通知書をメールで送ってもよいのでしょうか。
A.2019年4月1日より労働条件明示の方法について、従業員が希望した場合には、(1)ファクシミリを利用してする送信、(2)電子メールその他の電子的方法による送信(当該労働者が記録を出力することにより書面を作成できるものに限る。)とすることができることとなります。
現時点では労働基準法第15条第1項に「使用者は、労働契約の締結に際し、労働者に対して賃金、労働時間その他の労働条件を明示しなければならない。
この場合において、賃金及び労働時間に関する事項その他の厚生労働省令で定める事項については、厚生労働省令で定める方法により明示しなければならない。」と規定されています。
この条文でいう「厚生労働省令」とは、労働基準法施行規則第5条のことを指しており、その規則による明示すべき事項は以下の通りです。
つまり、労働基準法では明示の方法は明確化されておらず、その具体的な方法を厚生労働省が定める労働基準法施行規則により定め、その施行規則が書面交付義務を定めているという構成となっています。
今回の労働基準法施行規則の改正は、働き方改革関連法に基づき、2018年9月7日に公布された「働き方改革を推進するための関係法律の整備に関する法律の施行に伴う厚生労働省関係省令の整備等に関する省令」に基づくものです。この省令は、2019年4月1日に施行されることが決定しています。
この改正により①~⑥の書面での明示が必要なものについて、「当該労働者が希望した場合」次の方法による明示も可能になります。
・ファクシミリの送信
・電子メールその他のその受信をする者を特定して情報を伝達するために用いられる電気通信の送信
(当該労働者が当該電子メール等の記録を出力することにより書面を作成することができるものに限る。)
注意すべき点は以下の3点です。
(1)「当該労働者が希望した場合」が要件
労働者本人がFAX、電子メール等での明示を希望した場合に限りますので、本人の意向を確認せずに一方的にFAX、電子メール等で労働条件を明示することはできません。
(2)「その他のその受信をする者を特定して情報を伝達するために用いられる電気通信」とは?
労働者本人を特定して、その本人のためだけにネットワークを通じて送信されることが要件として定められています。
(3)「当該労働者が当該電子メール等の記録を出力することにより書面を作成することができる」ことが要件
つまり、電子メール等を受け取った本人が紙で出力できることが前提となっています。 そのため、印刷を前提としていないスマホのアプリ等での送信は認められない可能性が高いことがわかります。
電子メール等での明示に切り替えをお考えの事業所においては、本人の希望確認方法や使用する電子通信方法等を検討しておく必要があります。
(2019年02月19日)