Q.同一労働同一賃金に関する最高裁判決の内容は?
10月に賞与・退職金・各種手当等について、正規労働者と非正規労働者との待遇差に関する最高裁判決があったと聞きました。判決内容を教えてください。
A.賞与・退職金と、各種手当等で異なる判決となりました。
まず賞与と退職金の判決について確認しましょう。
【大阪医科薬科大学事件】
■訴訟内容
秘書として働いていたアルバイト職員が、正職員はに支給される賞与が、支給されないことなどの格差について
■最高裁判決
不合理ではない
■判決理由
・職務内容に一定の相違あり
・職務の内容及び配置の変更の範囲に一定の相違あり
・正職員への登用制度あり
・支給目的が、正職員として職務を遂行し得る人材の確保・定着である
【メトロコマース事件】
■訴訟内容
東京メトロの売店で働く契約社員が、正社員には支給される退職金などが、支給されないことの格差について
■最高裁判決
不合理ではない
■判決理由
・職務内容に一定の相違あり
・職務の内容及び配置の変更の範囲に一定の相違あり
・正社員への登用制度あり
・支給目的が、正社員として職務を遂行し得る人材の確保・定着である
どちらの判決も、賞与・退職金の「性質」や「支給目的」を踏まえて諸事情を考慮し不合理かどうか検討する必要がある、としました(大阪医科薬科大学事件での正職員の賞与は基本給の4.6カ月分であり、業績に連動するものではありませんでした)。
不合理かどうかは、支給目的や職務内容・責任の重さなどをみて総合的に判断されます。今回の判決では「不合理ではない」との判決が出ましたが、全ての事業所にあてはまるわけではなく、内容によっては「不合理」と判断される可能性があります。
では、次に各種手当等の判決について確認しましょう。
【日本郵便事件】
■訴訟内容
日本郵便で働く契約社員が、手当や休暇制度などの正社員との待遇格差について
■最高裁判決
年末年始勤務手当・年始勤務の祝日給・扶養手当・病気休暇・夏期冬期休暇について、不合理との判決
不合理かどうかは、手当・制度の目的から検討する必要がある、としました。
本件では、いずれの手当・制度でも「支給目的」が正社員と契約社員との待遇差について説明できないものでした。つまり、待遇差について説明できれば「不合理でない」と判断される可能性があります。
今後の同一労働同一賃金の対応として
・職務内容、責任の重さ、配置転換、職務内容の変更などの違いを明確化
・支給の目的や理由を明確化
・正社員への登用制度を検討
これらを踏まえて現状を分析し、制度を構築していくことが非常に重要です。
(2020年12月度編集)