Q.事業継承の準備に関して、今のうちに準備できることはありますか?
最近、医師仲間で集まると、事業承継の話題で持ちきりです。自分もそのような年齢になってきたのだと実感しますが、動けるうちは働き続けたいと今は考えています。ただ、近い将来に向けて、現時点で準備できることがあれば教えてください。
A.どのような準備が必要か、それぞれのご家庭で優先順位は様々です。
事業計画と老後のライフプラン
何十年も前にご開業されたとき、診療所の事業計画に併せて、ご自身とご家族のライフプランについてもお考えになられたことと思います。診療所経営を軌道に乗せることを最優先にされていた創業期と、事業承継を考えるようになられた現在では、生活スタイルやご家族の状況は大きく異なっています。 そこで、事業をどこまで続けるか、どのような準備を進めるか、事業計画と老後のライフプランについて、今一度ライフプランを確認されることをお勧めします。
老後資金にあまりご不安のない先生は、退職年齢を決めて整理をしていき、計画に沿ってご勇退されることもあるようです。閉院される場合もあれば、ご親族への承継準備をされたり、M&Aを検討されたりと、早い段階で行動に移されています。
しかし、そもそも老後資金とはどれくらい必要なのでしょうか。厚生労働省が高校生向けに作成した「高校生が知っておくべき将来の話」によると、60代の世帯で月額30万円の老後資金、70代以上の世帯で月額22万円の資金が必要と試算されています。
生活水準が高い開業医の先生方の場合は、世帯でなく、お1人当たりでこれくらいは必要かもしれません。 2017年の日本人の平均寿命は、女性が87.26歳、男性が81.09歳。65歳の方が平均寿命まで生きられるとすると、ざっと計算して、男性は4,700万円、女性は6,300万円必要と試算されます。 ご夫婦で1億1千万円。95歳までご存命であれば、70歳でご勇退されたとしても、必要な老後資金はさらに膨らみます。
もっとも、全てを預貯金で用意する必要はありません。公的年金や私的年金、小規模企業共済や退職金などでご準備されている金額があるからです。それでも、今後は公的年金に頼ることは難しくなっていきます。私的年金や退職金についても、いつ、いくら受け取れるのか数字で明確にしておく必要があるでしょう。
マネープランの明確化と環境への柔軟な対応力
重要なことは、老後のマネープランを明確にした上で、ご家庭の事情も経営環境も変化していることを意識されることだと思います。そしてご自身やご家族の生活スタイルとライフプランを柔軟に変えていけるかどうかが、大きなポイントになります。 地域のために働ける限り経営を続けていこうというお考えや志は、素晴らしいことです。それは言い換えれば、事業の収支が合い、老後のライフプランが成り立つということです。
そして、ご開業の際は先生の情熱が中心でしたが、老後のマネープランにおいては、配偶者やご家族の皆さんの願いが中心になるものです。 どのような準備が必要かは、それぞれのご家庭で優先順位は様々です。私たちもリタイヤメントプランをもとにご家族でのお話し合いのお役に立てるように、取り組んでいきたいと思います。
(日本経営ウィル税理士法人 医療事業部/2019年9月度編集)
(2019年9月度編集)