Q.消費税納税に際し、簡易課税制度から一般課税制度に移行する場合の留意点は?
消費税率が2019年の10月より、10%への引き上げが決定しており、当診療所でも、そろそろ対応を検討すべき時期にきています。 当診療所では従来、医業収入が5,000万円以下だったので、売り上げに係った消費税から、支払いに係ったみなし消費税を差し引く簡易課税制度の税額計算を行ってきました。
ところが、医師・看護師を増員し在宅医療を手がける等、事業規模を拡大してきたため、2019年度の収入は5,000万円を超える見込みです。そのため、今後、簡易課税制度ではなく一般課税制度を適用した税額計算を行っていく必要があると考えています。その場合の留意点を教えて下さい。
(地方都市・一般内科診療所・事務長・院長夫人・59歳)
A.一般課税制度とは、「実際の課税売上高に係る消費税額」から算出する方法で、仕入れの記録をした帳簿と、仕入れに関する請求書等の保存が、今後、義務付けられることになります。
一般課税制度はわかりやすく言うと「預かった消費税」から「支払った消費税」を差し引き、差額分を納付する制度です。
この「支払った消費税」は課税売上に係る「経費」に限定されますが、例えば消耗品の購入等に係る経費で考えると、 ア.「自由診療行為に使用した場合」 イ.「保険診療行為に使用した場合」 ウ.「両方に使用した場合」 の3つに分類して把握することが必要です。
そして、「支払った消費税」として差し引ける金額はアの「自由診療」と、ウの「自由診療等と保険診療の双方に係る消耗品」のうち、「自由診療等に係る割合の額」となります。
要するに、保険診療に係る消耗品の購入に関しては増税、つまり「損税」となってしまうのです。 経費の支払いに関して「対課税売上の経費」、「対非課税売上の経費」、「共通の経費」をきちんと仕分け・分類して、帳簿に記入してから、決算時に消費税額を算出することが大事です。これは、従来の簡易課税制度では求められなかった作業で、煩雑に感じられるかもしれません。
ただ、消費税納税義務の有無の判断となる基準期間は、個人事業者の場合、その年の前々年、法人は当該事業年度の前々事業年度の課税売上高が対象ですので、一般課税制度に移行する準備期間は十分にあります。
(2019年9度編集)