Q.いくつかのパターンがある「予約制」導入の手法について
私は7年前に開業、日本専門医機構の「総合診療専門医」研修を修了し、「赤ちゃんからお年寄り」まで幅広い患者さんを診るホームドクターとしての診療活動を実践しております。守備範囲が広いことから、1日平均、外来患者数が100人を超える日もあり、午前診の診療時間が3時頃まで長引いてしまうことも多々あります。
非常勤のドクターが1名、参加し、通常は医師2名体制で対応していますが、効率の良い診療を実践するために、これまで実施していなかった予約制の導入を検討しています。予約制と言っても様々な手法があるようですが、患者さんの利便性を尊重し、あまり「予約」に縛られない柔軟な導入の仕方を教えて下さい。
(近畿圏郊外都市 一般内科系診療所 院長 総合診療医・48歳)
A.部分的にフリーアクセスの受診形態も残しながら、「予約制」を弾力的に運用していくのが理想でしょう。
クリニックを受診する患者は外来の「待ち」だけでなく、診察終了後の診療費支払いの「待ち」、薬局での調剤の「待ち」等も発生し、「待ち」時間でストレスが蓄積されることになります。
あるクリニックでは、(1)受付窓口での予約(電話を含む)、(2)自動電話予約、(3)インターネット予約(パソコンやスマホ等)、(4)予約外の当日の順番取り―の4パターンの予約制を導入し、それらの組み合わせによって、予約制を利用できるのが特徴で、ほぼ9割の患者が予約制で当該クリニックを利用しています。
このうち、(1)と(4)は初診・再診を問わず予約制を利用でき、(2)(3)は再診患者のみが対象。(3)のパソコンはホームページから、スマホや携帯電話を使う場合は登録制です。予約申し込み時間は、(1)は診療時間内、(2)は(3)は24時間対応、但し当日受診の場合は午前7時まで。(4)は午前の部は8時半からで、午後の部は3時半からで時間厳守。予約可能日時は(1)が当日から1か月先まで可能(2)当日と翌日のみ(3)8週間先まで可能(4)当日のみ―と厳密に運用しています。
各々の医療機関で自院に最善・最適と判断された予約システムを導入していくのが良いでしょう。パソコンやスマホ等に疎い高齢患者の多いクリニックの場合は、(1)や(2)のニーズが高くなると予想されます。
いずれにせよ「予約制」にあまり拘泥すると、多忙な現役世代の患者は、予約時間に縛られて受診し難くなり、診療所の多い都心部等では“患者離れ”が起こることも想定されます。運用が難しいことも事実ですが、夕方からの外来はフリーアクセスの患者が受診しやすいように、一部、フリーアクセスの受診形態も残しながら、「予約制」を弾力的に運用していくのが理想でしょう。
(2020年8月度編集)