Q.「地域医療連携推進法人」が当初の予想よりも増えない理由は?

「地域において良質かつ適切な医療を効率的に提供するため、医療連携推進方針を定め、医療連携業務を行う一般社団法人を都道府県が認定する」との主旨で2016年の第7次医療法改正で創設された「地域医療連携推進法人」は、2020年10月現在20法人を超えました。当院がある京都府内では未だ設立されてはいませんが、地域医療構想に伴う病院再編が重要なテーマとなる中で、同推進法人の動向は私たち中小民間病院にも気になるところです。

全国に20ある同推進法人を検証すると、当初は大学病院や国公立病院等の基幹病院が中心となりネットワーク化を進めてきた事例が多かったように思いますが、最近誕生した同推進法人は人口減少の著しい地方等の民間医療機関等が中心となり、小規模医療機関も含め独自のグループ化を進める事例が多くなってきた印象です。

私が理解し難いのは、「なぜ教育病院である大学病院が同推進法人に関心を持つのか?」ということ。更に明確な将来構想を打ち出しながらも、実際に同推進法人設立に至ったケースは現状、少ないという点です。制度が創設され2021年には5年目を迎えますが、大学病院等、基幹病院の台頭が思ったよりも進展しない理由が分かれば、私たち民間病院も別次元からの戦略を練り易くなると考えています。

(京都府 医療法人病院(200床未満)管理部長・64歳)

A.個々の病院が目指す方向性の違いや利害調整などが関係していると推測します。

全国各地の大学附属病院や基幹病院等にも個別の事情があり、一律にまた軽々には論じられないことを前提にお答えします。いくつかの大学病院が同推進法人に当初、高い関心を示したのは、連携の推進や地域包括ケアシステムの構築に加えて、ホンネとしては「大学病院のビジネス拡大」と当該大学病院を中心とした「病院の系列下」を進めることに重点が置かれたと推測します。

初期の同推進法人を巡る個別の議論として注目されたのは2014年に開催された「産業競争力会議」で、某地方都市における複数の基幹病院の再編にかかわる構想が示されたことです。そこでは、某国立大学附属病院を別法人化し、同附属病院を中核として近隣病院を包含。同一のガバナンスの下で「競合・分立していた診療内容を再編し、競合を回避し各々の診療領域の規模及び質を向上させ、日本一の質を持った医療事業体を創出する」との画期的なものでした。

そこでは、「国際レベルのメガホスピタルとなり、県外及びアジア等、海外からも積極的に患者の受け入れを行い医療事業の核として、日本のサービスを海外へ輸出する拠点とする」との壮大なプランを打ち出していました。これらを見ても当初、政府は医療ビジネスを成長させる視点から、同推進法人の創設を検討しており、その流れに乗っていくつかの大学病院等は、同推進法人を主導しようとしたのではないでしょうか。

しかし、前出・自治体では未だ同推進法人は誕生しておらず、今後も実現は未知数です。大学病院を中心としたネットワーク化が難しいのは、個々の病院のミッションや文化、目指す方向性の違い、利害調整等が上手くいかないことがあり、出自の異なる医療機関同士のアライアンス締結に困難が伴うのだと思います。

同推進法人設立に向けた協議の中で、大学病院の上から目線対応や、独善的なビジネス上の思惑等が露呈すると、他の病院等から不協和音が出てくることも予想されます。最近設立された同推進法人には、地方の診療所や、地域の中小民間病院等の有志が中心となって手を挙げた事例が複数あり、それらの医療機関の動向も要注目です。

(2020年11月度編集)

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