新型コロナウイルスの感染拡大は病院・診療所経営に大きな影響をもたらしています。5月末に緊急事態宣言が全国で解除され、いったんは収束するかに見えた感染者も再び増加しており、依然全国で猛威を振るっています。感染拡大をきっかけとして、「新しい生活様式」を実践しながらどのように活動を継続していけばよいかということが、病院・診療所に求められております。

 このようなWithコロナの時代に、病院・診療所はどのように考え、どのように行動に移せば良いのか考えていきます。

 2020年初頭に始まった新型コロナウイルス(COVID-19)の感染拡大は、4月に緊急事態宣言が出され、いったん収束に向かったように見えました。政府は、5月末に緊急事態宣言を全国で解除しました。解除以降、経済が再開され、人の動きが活発化したことにより、7月に入り再拡大の状況が生まれています。
終わりの見えないコロナ禍の中で「Withコロナ」という、新型コロナウイルスと共存していかなければならない時代が到来しています。「Withコロナ」では、これまでの普通が普通でなく、「New Normal」という言葉に表されているように、社会が新しい機軸を探しながら進んでいく状況が生まれています。

新しい生活様式とその影響

 政府は、緊急事態宣言解除後の生活として「新しい生活様式」という機軸を提示しました。厚労省が公表した「新しい生活様式の実践例」では、

  • 一人ひとりの基本的感染対策(距離の確保、マスク着用、手洗い、最小限の移動)
  • 日常生活を営む上での基本的生活様式(手洗い・手指消毒、3密の回避、健康チェック)
  • 日常生活の各場面別の生活様式(買い物、交通機関の利用など場面ごとの行動制限)
  • 働き方の新しいスタイル(テレワークの推奨、オンライン会議など)

の4点が挙げられています。

 政府が提示した新しい生活様式では、感染対策を引き続き徹底し、できるだけ不要不急の外出を控え、3密(密閉・密集・密接)を避けることなどが求められています。これらの行動は、新型コロナウイルスの感染拡大を抑えるだけではなく、通常のかぜ症状やインフルエンザの蔓延を減少させる効果があったとされています。

コロナ禍の受診控えが病院・診療所経営に大きく影響

 この3密を避けるという行動や、度重なる医療機関でのクラスターの報告が、患者様に対して「医療機関での院内感染が怖い」というマインドを作り出しており、医療機関の受診を先延ばしするという「受診控え」をもたらしています。その結果、大幅な患者数の減少、収益の悪化が報告されています。

 7月22日に日本医師会が公表した「新型コロナウイルス対応下での医業経営状況等アンケート調査(2019年および2020年3~5月レセプト調査)」によると、診療所では、2020年5月は総件数(実患者数に相当)が20.8%減、総日数(延べ患者数に相当)が22.9%減、総点数(保険収入)が20.2%減と、すべての値が対前年同月比で2割以上減少しています。

図表1 診療所総件数・総日数・総点数

(出典)新型コロナウイルス対応下での医業経営状況等アンケート調査(日本医師会)より「診療所(有床・無床)入院外総件数・総実日数・総点数 対前年同月比」
(出典)新型コロナウイルス対応下での医業経営状況等アンケート調査(日本医師会)

 図表1を見ると、3月、4月、5月と月を追うごとに状況が悪化してきており、その原因としては、外出自粛や院内感染の恐れから受診控えが進んだこと、長期処方増加の影響から受診頻度が減少したことなどが考えられます。緊急事態宣言が解除され、経済が再開されたことで患者様は戻りつつありますが、感染拡大が増加傾向にある現在、この傾向はしばらく繰り返す可能性があり、診療所にとっては厳しい経営環境が続くことが予想されます。

特定健診、がん検診等、各種健診の実施者数

 また、同調査では「特定健診、がん検診等、各種健診の実施者数」が報告されています。5月時点で前年同期に比べて、一般病院は「(実施者数が)大幅に減った」が52.9%、「やや減った」が18.5%となり、無床診療所は「(実施者数が)大幅に減った」が36.5%、「やや減った」が22.8%となり、病院で約7割、診療所で約6割減少していることが明らかになっています。日本医師会はこの状況に対して、「いずれも実施者数が減少しており、健康への悪影響が懸念されるため、受診勧奨が大変重要である」と調査報告書の中で言及しています。

図表2 特定健診、がん検診等、各種健診の実施者数

(出典)新型コロナウイルス対応下での医業経営状況等アンケート調査(日本医師会)より「特定健診、がん検診、各種健診の実施者数(前年同期と比較して)」
(出典)新型コロナウイルス対応下での医業経営状況等アンケート調査(日本医師会)

 医療機関はこの厳しい経営環境の中でどのように考え、行動していく必要があるのでしょうか。医療機関は地域になくてはならない公共的なサービスとしての役割を担っています。そのため、いくら収益が悪化したとしても、「医療サービスの継続的提供」そしてそれを支える「スタッフの雇用維持」を続けなければなりません。

 そこで、今後連載ではコロナ禍での医療機関、特に病院・診療所の経営戦略について焦点を当て、いまできること、将来に向けて準備することを解説していきます。

※続きの記事「病院・診療所のためのコロナ禍の経営/クラウド戦略(2)」はこちらからお読みいただけます。ぜひ続けてお読みください。

https://carnas.njc.co.jp/column/management-strategy-for-hospital-and-clinics-02


執筆者プロフィール

MICTコンサルティング株式会社 代表取締役 大西 大輔 氏

2001年一橋大学大学院MBAコース修了。同年医療系コンサルティングファーム「日本経営グループ」入社。02年医療IT総合展示場「メディプラザ」設立(~2016閉館)。16年コンサルタントとして独立し「MICTコンサルティング」を設立、現代表。19年一般社団法人リンクア(医療・介護教育)を設立、現理事。
過去3000件を超える医療機関へのシステム導入の実績に基づき、診療所・病院・医療IT企業のコンサルティングおよび講演活動、執筆活動を行っている。

出典・参考

新型コロナウイルス対応下での医業経営状況等アンケート調査の続報を報告(日医on-line)