人が健康で元気に暮らし働くには、健康管理が非常に重要です。もし健康管理を怠り、健康を損なってしまうと、個人の生活に支障が出るだけではありません。その人が所属する組織、会社など産業の生産性・効率性が下がり、社会全体にも大きな影響が出てしまうことも考えられます。そこで日本では、企業に勤める社員は、年に1回は必ず定期健康診断を行うことが義務付けられています。また、40~74歳の保険者・被扶養者すべての人は、特定健診を受診しなければなりません。このように、国民の健康管理や病気の早期発見のために行われている制度が健康診断なのです。
この健康診断をスムーズに進めることができる、健診システムについて解説します。

 

労働安全衛生法における健康診断の

実施に関する法的根拠について

日本で生活していれば、必ずといっていいほど健康診断を受ける機会が設けられています。
この健康診断について規定している法律が、労働安全衛生法や労働安全衛生規則です。これらの法律は、単に労働者を対象とする「定期健康診断」だけではなく、就業前に行う「雇入時の健康診断」や海外赴任前に実施する「海外派遣労働者の健康診断」などについて細かく規定しています。

また健康診断の実施後、必要に応じて医師や保健師による、生活習慣改善のための保健指導(面談)などのフォローアップも行うよう記載されています。

 

健康診断を実施するには

健診システムを導入すべき?

前述のとおり、健康管理のために健康診断を受けることは非常に有効です。また、健康診断は自治体が行う住民健康診断のほかにも、健康保険組合や企業が独自で行う健康診断など、さまざまな団体、施設、組合などが実施しています。
健康診断を受ける人も年々増加傾向にあります。また、さらなる予防医療の促進といった観点から、検査項目も増えてきました。多数の受診者が多種目の検査を受けるようになるなか、短時間で正確に健康診断を実施することをめざして、コンピュータ処理による健診システムの導入を検討する医療機関が増えています。

またICT(情報通信技術)の発達により、通常のパソコンでも健診システムを利用できるようになりました。このような健診システムでは、総合的な事務処理の効率化のほか、健康診断後の追跡調査やデータの蓄積、検索、統計処理などが可能になります。予防医学にも大いに活用できると注目されているのです。では、受診・健診データの具体的な活用例を紹介しましょう。

 

(1)売上・受診状況の分析

日々の予約・受付・結果入力・請求書・入金管理など一連の処理をすることにより、下記のような健診データ管理の活用が可能になります。

  • 日、月ごとの売上状況の分析
  • 企業・健診コース別受診状況の分析
  • 検査項目・傷病別の分析

(2)モダリティの画像や電子カルテとのデータの共有化

健康診断で撮影した画像の取り込み、電子カルテとの情報共有化などにより、健康診断とその後の外来診療をスムーズに接続できます。そのため、診療への活用や前回の画像との比較読影などが簡単に行えます。

 

(3)再検査・精密検査の管理

健康診断結果に応じて、再検査・精密検査が必要な受診者を絞り込み、二次検査のフォローアップなどの管理がしやすくなります。

 

(4)医師面談・保健指導などのフォローアップへの活用

健康診断後の医師や保健師による指示・指導に必要な「有所見者一覧」など、健診データからの抽出や検索などが簡単に行えます。また、過去の健診データとの比較がパソコン上で簡単にできるため、健康状態や今後の予測が立てやすく、面談や指導の際に具体的なアドバイスを提供できるようになります。

 

健診システム導入においての4つのポイント

導入メリットの多い健診システムですが、導入にあたり、いくつかある健診システムのなかからどう選択するか、コスト面以外に確認しておくべき点は何かといった注意ポイントがあります。健診システムの選び方とポイントを4つにまとめます。

 

ポイントその1:さまざまなフォーマットの電子データの出力が可能か?

平成20年から始まった特定健康診査は、健診結果を国が定めた統一のデジタルフォーマットで提出することが義務付けられています。また、健康保険組合を中心に健診データをデジタルデータで提出することが、非常に多くなってきています。
そのため、さまざまなタイプのデジタルフォーマットを作成できる汎用性が必要になります。

 

ポイントその2:導入するならサーバー型? クラウド? 徹底比較

健診システムには、データを集約するサーバーが必要です。通常使用するパソコンは「クライアント」と呼ばれます。院内あるいは特定の場所に設けたサーバーと、主に院内LANなどを経由してつながるネットワークシステムを介して、必要なデータをクライアントに取り込んで作業をすることになります。

一方、最近急速に普及しているのが、クラウドコンピューティング(略してクラウド)という技術です。クラウドは、インターネット上のサーバーにアクセスすることで同じ作業ができるのが特徴です。

では、それぞれの特徴を確認しておきましょう。

サーバー型健診システム

  • 長所

サーバーが院内にあるため、アクセススピードが速くモダリティなどの大量のデータを扱うのに向いています。また、病院内の閉じたネットワーク環境下にサーバーやデータがあるため、セキュリティ面でも比較的安全と言えるでしょう。

  • 短所

サーバー・クライアントを含む導入費用が高く、初期投資が高額になってしまうことが最大の短所です。また、データの容量不足やサーバーの老朽化などの理由により定期的に交換する必要があり、その都度、高額な費用がかかるのが弱点です。こうした定期的なメンテナンス費用や故障時の修理費が発生します。

クラウド型健診システム

  • 長所

最大の長所は、高価なサーバーを導入する必要がないことです。そのため、導入時の初期費用を抑えることができます。さらに、サーバーが外部にあるため、ハードウェアのメンテナンス費用が不要で、ランニングコストの削減に有利です。
また、BCP(事業継続計画)の観点からもクラウドは有効です。病院などの施設が災害による被害で、ネットワークが使用不可能になった場合でも、クラウド上のデータは守られています。クライアント(使用端末)さえ準備できれば、すぐに活用できることもメリットです。

  • 短所

クラウドは、インターネット回線が生命線であるため、そこにトラブルが起きるとシステムダウンしてしまいます。また、クラウドサーバーになんらかのトラブルが発生すると同じような状況になります。したがって、信頼ができるインターネット回線やサービスを選ぶことが重要になります。

 

ポイントその3:導入および導入後のコストはどれくらい?

ポイントその2で解説したように、サーバー型とクラウド型では、導入時や導入後にかかる費用に差が出ます。初期導入費用やランニングコストはクライアント数や運用規模によって導入費用は変動します。(おおよその目安は以下のとおりですので参考にしてみたらいかがでしょうか。

サーバー型

初期導入費用:数百万円~

ランニングコスト:数万円~(月額)

クラウド型

初期導入費用:無料の場合もある

ランニングコスト:数万円~(月額)

初期導入費用は、クラウド型のほうがコストを抑えることができます。
また、ランニングコストについては、サーバー型はサーバーやクライアントの保守や修理費といった費用がかかりますが、クラウド型で主に発生するのはシステム利用費です。クラウド型の場合、このような保守や修理の必要がないという点でも、メリットがあるといえます。

 

ポイントその4:セキュリティは大丈夫? 個人情報漏えい対策について

クラウド型の場合、情報漏えいなどのセキュリティ対策が万全なのか気になるところです。2018年度の診療報酬改正で、インターネットを利用したオンライン診療が解禁になりました。さらに改正個人情報保護法の施行に伴い、セキュリティ対策のガイドライン第5版が公表されています。
それが、3省3ガイドライン(厚生労働省・経済産業省・総務省の3省が出している3つのガイドライン)と呼ばれるセキュリティ対策に関するガイドラインです。

クラウドでの健診システムを提供している事業者は、この3省3ガイドラインに準拠したネットワークシステムを構築する必要がでてきました。こうした動きのなか、個人情報や医療情報を含むデータの漏えいがないよう物理的・技術的要件を満たしている健診システムを選択すれば、安全といってよいでしょう。

 

まとめ

健康診断には、実施する医療機関側でコストや時間がかかります。しかし、健診システムによって健診結果をいかに早く受診者・事業所に提出できるかということが、他院との差別化のためのサービスのひとつになるでしょう。
そのために、どういった健診システムを導入するかは非常に重要です。また導入時の初期投資や導入後のランニングコストの確認など、継続可能で使いやすいシステムを選ぶ必要もあります。これらの要件を満たしているのが、クラウド型健診システムといえます。
将来的には、健診結果のデータ保存だけではなく、クラウド上でのデータ共有や、職員のテレワーク(在宅勤務)などの勤務形態を視野に入れた構築が必要になってくるかもしれません。将来的な展開を見すえた健診システムの導入を検討しましょう。

 

参考:

 

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