医療やヘルスケアの世界でも「IoT」という言葉が少しずつ浸透してきています。今後の超高齢社会を踏まて、IoTの活用が医療の世界にどのような変化をもたらすのか考えてみましょう。

センサーやカメラなネットワークにつながりIoTが身近に

「IoT」とはInternet of Thingsの略で、日本語では「モノのインターネット」と訳されます。一般的には、「あらゆるモノがインターネットにつながり、様々な場所に情報が送信され活用される仕組み」と定義されています。実はこの仕組みは、私たちの生活の様々なところで活用されつつあります。

IoTの具体例としては、腕に着けるだけで活動量(運動量)や脈拍などが測定でき、自動的にクラウドデータベースに蓄積される「ウェラブルバンド」や、冷蔵庫やエアコンなどをスマートフォンで遠隔監視する「スマート家電(最近ではIoT家電と呼ばれることもあります)」。これはドアの開閉や家電の消し忘れなどを管理でき、家全体を遠隔監視することが可能となっています。

IoTを活用することで、(1)情報の取得(遠隔センサー、遠隔カメラ等から取得)(2)取得したデータの送信・蓄積(ネットワークによりクラウドサーバに送信・蓄積)ができるだけでなく、(3)そのデータはAI等を利用して分析し、(4)分析結果をフィードバックする、ことを可能とします。

データ分析の結果、先に挙げたIoT家電によって、起床リズムや帰宅時間などを予測し、自動的にエアコンのオン・オフどころか、適正な室温さえもが管理できるようになるのです。このような技術を医療でも、ヘルスケア分野でも利用する動きは当然の流れと言えるでしょう。

遠隔モニタリング加算の新設

2017年6月9日に閣議決定された「規制改革実施計画」では、遠隔診療の診療報酬上の評価の拡充として、「対面診療と遠隔診療を単に比較するのではなく、より効果的・効率的な医療の提供を可能とする観点から、糖尿病等の生活習慣病患者の効果的な指導・管理、血圧、血糖等の遠隔モニタリングを活用するなど、対面とオンラインを組み合わせることで継続的な経過観察が可能になり重症化を防ぐといった例も含め、診療報酬上より適切な評価がなされるよう、遠隔診療の診療報酬上の評価の在り方について、平成30年度診療報酬改定に向けて対応を検討し、結論を得る」とされました。

その結果、2018年の改定では、オンライン診療料、オンライン医学管理料が新設されるとともに、遠隔モニタリングの評価として、「心臓ペースメーカー指導管理料」に続いて、「在宅持続陽圧呼吸療法指導管理料」と「在宅酸素療法指導管理料」に「遠隔モニタリング加算」が新設されました。

このように遠隔モニタリングが評価された背景には、インターネットの普及とともに距離が離れたところから遠隔監視ができるセンサーやカメラなどの技術が急速に普及していることが、要因としてあげられます。

遠隔モニタリングの未来

医療やヘルスケア分野で遠隔モニタリングが進むことは、今後医療費の抑制、人件費の削減、医療介護スタッフの負担軽減という観点からも大きな効果が期待できます。例えば、ベッドシーツの下にセンサーを敷くことで、患者の離床が分かるだけでなく、呼吸や脈拍のモニタリング、寝返りや排泄等の自動監視、タイミング予測なども行えるようになるのです。在宅や介護の現場でこれらの技術が導入されることで、夜間の訪問や巡回の回数を大幅に減少させることが可能となります。その結果、さまざまな看護・介護の負担の軽減や、健康状態の遠隔モニタリング、さらには廃用症候群の予防などへの活用にも期待できます。

今後、医療は予防分野がますます注目されることは間違いないでしょう。予防医療においても遠隔モニタリングの普及は大きく貢献します。病気にならないことが最も効果的な医療費抑制策であり、バイタルデータを遠隔監視することで、早期発見、早期治療ができるだけではなく、AIの活用によって病気になりやすい問題行動を、エビデンスをもって洗い出すことも簡単にできるようになるのです。

今回の改定で遠隔モニタリングの窓が大きく開きました。2年に1回の診療報酬改定での変更では、追いつかないほどIoT技術は急速に発展を続けています。診療報酬の評価だけではなく、補助金なども組み合わせて積極的に政府が後押しをしていただくことを期待し、次の改定ではさらなる評価を期待します。

(2018年11月27日)