医療IT最前線 第72回 電子カルテの導入時のポイント
電子カルテの普及が進んだことで、いま医療機関が求めることは、診療所の日々の活動の中で、「当たり前に使える」ことだと考えます。しかしながら、電子カルテを「当たり前」に使うためには、電子カルテ選びも大切ですが、メーカー決定後のセッティングが大切です。
そこで今回は、電子カルテメーカーが行う導入サポートについて説明します。
クラウド時代は、「導入・研修」が選べる時代
電子カルテの「導入および研修」は、メーカーごとにやり方が異なることはあまり知られていません。せいぜい手厚いか手厚くないかといった程度でしょう。電子カルテの導入を長年支援してきた立場から言うと、「明らかに違う」と言わざるを得ません。この違いこそが、電子カルテ導入後の安定稼働を決めます。
また、最近では、クラウドタイプの安価な電子カルテが出てきたため、「導入・研修」をメーカー(代理店)が行うのか、そこは費用節約するために、医療機関がマニュアを見ながら、自分で行うのかを選べる時代となりました。時間に余裕があり、パソコンに詳しい場合は、これも一つの方法でしょうが、日々診療が忙しい開業医にとっては、自分でセッティングする時間があるのであれば、そこは業者に任せて、診療に時間を割いた方が良いと思われます。
現場の運用を理解し、シミュレーションでなじませる
メーカーが行う場合は、稼働前の2カ月間で行われることが一般的です。電子カルテはあくまでツールであり、それを使いこなせるかどうかは、この導入(セットアップ:医薬品マスターやセットなどを設定すること)と研修(操作指導)にかかっています。 現場の運用に合わせてセットアップが行われるのですが、運用の理解が不十分であったり、スケジュールに無理があったり、導入・研修を担当するインストラクターが未熟で、意思の疎通が上手くいかなかったりすれば、当然問題が発生します。
注意点は、以下の4点です。
(1)現場の運用について相互にイメージが共有できるまで話し合う
(2)よく使う処方やセットを予めリスト化しておく
(3)スケジュールは長めにとり、余裕をもって行う
(4)インストラクターとの相性にも配慮し、合わないと感じたならば交代も考える
(5)実際の利用シーンを想定した「シミュレーション」を十分に行う
このシミュレーションを随所に行うことで、現場の運用に電子カルテがなじんでいきます。できれば、研修初日にどんな運用を行うのかのシミュレーションを仮に行うことで、全体像が把握できるので、おすすめです。
稼働日は最終確認日、膿を十分に出そう
電子カルテの「セッティング・操作研修」が終了すれば、いよいよ電子カルテの稼働となります。
稼働日にインストラクターが立ち合いを行い、スムーズな稼働をサポートしてくれます。この際にその都度見直しを行い、十分に「膿」を出してください。操作が不安であれば、この時間を使って再確認を行います。稼働当日は、患者さんの人数を制限するなどして、できるだけ無理のない対応を行いたいところです。
また、稼働日が繁忙期と重なる場合は、患者さんに迷惑が掛かりますので、できるだけスケジュールを立てる際に繁忙期を避けた「稼働日」にすると良いでしょう。後から変更が次々に発生しないように、この「稼働立ち合い」を十分に活用してください。
また、1カ月後のレセプトの発行についても立ち合いをお願いすれば、請求業務についてもスムーズに進むことでしょう。この「稼働立ち合い」についても、立ち合い日数がメーカーによって異なりますので、事前に十分確認しておくことをお勧めします。