コロナ禍の変化に適応する新常識に沿った診療所づくり(2)

診療所のサービスとは?

さて、あらためて診療所の「サービス」とは何でしょうか。

医療行為と医療行為以外のサービスに分けて考えると良いでしょう。診療所の「医療行為」は、疾患の発見、診断、治療、適切な専門病院への紹介、などが考えられます。これらについては、診療時間が延びれば充実していくことも可能でしょう。

コロナ禍の受診控えや受診頻度の低下をしている状況では、患者の立場で考えるとできるだけ診療の際は手厚いサービスを求めることが予想されます。「急いで患者を診なければ」という追い立てられる思いをいったん横に置き、一人ひとり丁寧に診察することを心掛けることは、患者が少ない今だからこそできるサービス向上の一つです。

待たせないこともサービス

他業界において成功している多くの企業が取り組んでいるのは付加サービスの大切さです。先ほど挙げた「医療行為以外のサービス」です。最近はよく「モノ・サービス」を売るのではなく、「体験」を売ることを優れた価値としています。

診療所において良い体験とは何でしょうか。患者の不満にそのヒントがあります。患者アンケートで常に不満の上位を占める項目は、「待ち時間」と「説明不足」です。時間の考え方が大きく変わったいまこそ、ここに取り組んでほしいのです。

「待たせない」ことも立派なサービスであり、良い体験のためには必要不可欠なサービス向上です。特に感染を恐れるいまは、最も重要なサービス向上といっても過言ではないでしょう。また、患者の診療時間をしっかり確保し、医師、看護師、受付スタッフが適切な説明を行うことも重要なサービスとなります。診療所は安心・安全な場所であり、相談しやすい環境づくりもサービスの一環といえるでしょう。

Webサイト、SNSの重要性が増している

コロナ禍で、診療所のプロモーションのあり方も大きく変わろうとしています。プロモーションとは患者への告知活動と言い換えられます。現在は、電車などの公共交通機関を使わず、外出を避ける代わりにステイホームが増えています。

そのため、従来型の看板広告はほとんど作用しなくなってしまいました。実際に駅の看板の空きが目立つようになっています。この傾向は、都心部ほど顕著に起きています。一方で、巣ごもりのためにWebサイトを見る機会が増えており、ホームページやSNSの役割がますます大きくなっています。いまいちど、ホームページの見直し、スマホへの対応を考えてみると良いでしょう。

告知は伝わらなければ効果なし

コロナ禍において、患者に安心して来院してもらうためにと、多くの医療機関は「感染防止策」を行っています。しかしながら、このようなクリニックの感染防止策は、患者に正しい情報として届かなければ意味がありません。

例えば、患者から「通院して危険はないか」「オンライン診療に対応しているか」といった電話が多くかかっているようでは、受付はその対応に追われてしまいます。医療機関が保有する情報と、患者が知り得る情報の差、そして感染の恐怖が「とりあえず電話」というかたちで表出しているのでしょう。この電話を減らすためにも、ホームページやSNSの活用は有効であると考えます。

2年分のデジタル変革が2か月で起きた

診療所のホームページは、コロナ禍でとても重要なプロモーションツールとなりました。ホームページが患者の受療行動に影響するレベルは、コロナ前と比べてはるかに大きくなっていることでしょう。

新型コロナが蔓延する前から、インターネットやスマホの普及により、その傾向は始まっていたのですが、このコロナ禍で一気に加速したと言えるのではないでしょうか。マイクロソフトのサティア・ナデラCEOは、「(コロナ禍)で2年分のデジタル変革が2か月で起きた」と述べています。私たちが感じている以上に、IT化の波が急激に押し寄せているのです。

急激な変化への対策としては、ホームページに「待ち時間」や「待ち人数」など、現在の混雑状況を載せてみてはいかがでしょうか。密を避けたい患者にとって、今すぐ行けば混雑(密)を避けられると自宅や外出先から分かれば、受診はしやすいでしょう。これを行うためには、診療予約システムの導入が必要となります。ホームページの充実の一環として、また患者への安心・安全のPR方法として、検討してみてはいかがでしょうか。

(MICTコンサルティング株式会社 大西 大輔)

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