新型コロナウイルス(COVID-19)の感染拡大は、私たちの生活様式、それに伴う受領行動を大きく変化させようとしています。これまでの常識が通用しないNew Normal(新常識)が生まれようとしているのです。診療所はこれまでの延長線上で経営を行うのではなく、「新しい受療行動」を踏まえた、新常識で経営を行うための「行動変容」が求められています。

立地の考え方が変わる

診療所経営において、「立地」は経営成功のための最も重要なものでした。開業するにあたって、診療圏分析を行い、患者の集まる場所を特定し、開業するのが常識でした。そのため、「人が集まるところ」の立地が好まれてきました。

しかしながら、コロナ禍では在宅勤務が推奨され、都心への通勤が大きく減少しました。昼間人口が多く、夜間人口が少ないような都心部の立地や、通勤通学の帰りに立ち寄れる駅前立地は、コロナ禍においては好立地ではなくなってきているようです。明らかに人々の行動導線が変わってきていると言えるでしょう。

「生活圏」に立地する必要がある

また、診療圏分析で用いられている人口動態や受療率は5年前のデータであり、コロナ禍の現在とは一致しなくなってきています。ちょうど今、国勢調査が行われており、それが反映されるのはもう少し先になります。

これまで参考とされてきた、診療圏分析で導き出されたデータが、実は有効ではない可能性があるのです。しばらくWithコロナの状況が続くと仮定するならば、開業場所を変えざるを得ない診療所も出てくるかもしれません。現在の状況を考えると、患者の行動範囲が極端に狭くなっており、また感染を恐れて、公共交通機関ではなく自家用車での移動が増えています。そのため、郊外型の住宅地に近い立地が好立地になっているように感じます。

今回のコロナ・パンデミックの影響も、住宅地に近接していればいるほど、早期に患者数が回復しています。つまり、行動範囲が狭くなっている今は、生活圏内に立地していることが重要となっているのです。

価格はコントロールできない?

診療所経営において、これまで「価格」は保険診療であれば診療報酬点数があらかじめ決まっているため、価格をコントロールするのは難しいのではないかと考えられてきました。その結果として、これまで医業収益(売上)を増やすためには「患者数」を増やすことが大切だとされてきました。

しかしながら、コロナ禍においては、受診控えや受診頻度の低下などの影響により、患者数は著しく減少しています。特に、小児科や耳鼻咽喉科、都心のクリニックは大きく患者数を減らしています。感染対策をしっかり行い、リモートワークなどの勤務が一般化したいま、この傾向はしばらく続くことが予想されます。

価格アップに取り組むためには歯科業界を参考に

コロナ禍では、「価格」である「患者当たり平均単価」にもしっかり注目した方が良いでしょう。患者の増加が見込めない今こそ、「薄利適売」の発想から、「適利適売」という発想への転換が必要だと思われます。この適利適売とは、クリニックの適正患者数(一日に診れる患者数の上限)に対して、十分な利益を得られる単価を設定するという考え方です。これを達成するためには、他業界の事例が参考になります。

歯科業界は早くから、自費分野の増加により患者単価をアップさせ、適正患者数に近づけるために、予約管理を行ってきました。前者は、矯正やインプラント、ホワイトニングなどで、後者は予約管理システムの導入やリコールなどをしっかり行うことです。
これを医科に置き換えると、まずは検査数を増やすための「患者説明の充実」から始めてはいかがでしょうか。これまでは患者を増やすことを優先に考えて、スピード重視の診療を行っていたのであれば、患者へしっかりと検査などの提案をする時間は限られていました。しかし、患者数が一定になれば、その時間はしっかりとれるようになります。患者の現在の症状、将来の可能性をしっかり考えて、いま行った方が良い検査を提案することで、患者単価をアップすることは可能です。それを行いながら、少しずつ自費分野も増やしていけば良いと思います。患者も提案に慣れてくれば、自費の提案をも受け入れやすくなるでしょう。

適正患者確保するためにはIT化・自動化は必須

患者に向き合う時間を確保するためには、「適正患者」への取り組みが必要です。これは歯科同様、予約管理やリコールなどをしっかり行う必要があります。昨今の急速なITの進歩(ネットやSNSの普及)によって、予約管理もリコールも便利なシステムが出てきています。患者へのアプローチが以前と比べ格段に良くなっているので、これらの作業を人間が行うと考えると大変ですがですが、この際、IT化・自動化を徹底的に進め、パソコンに自動で行わせるスタイルを考えてみてはいかがでしょうか。

(MICTコンサルティング株式会社 大西 大輔)