Q.パワーハラスメント対策の義務化について教えてください。

パワーハラスメント対策が義務化されると聞きました。具体的にどのようなことが事業主に義務付けられるのでしょうか。また、その他ハラスメントについて、留意することはありますか?

A.職場におけるパワーハラスメント防止のために、雇用管理上必要な措置を講じることが事業主の義務となります。(適切な措置を講じていない場合には是正指導の対象となります。)

雇用管理上の措置の具体的内容は、現行のセクハラ防止の措置義務の内容を踏まえて今後、指針において示される予定です。
現段階では以下の内容が考えられます。

■事業主によるパワハラ防止の社内方針の明確化と周知・啓発
■苦情などに対する相談体制の整備
■被害を受けた労働者へのケアや再発防止 等

職場におけるパワーハラスメントとは、以下の3つの要素をすべて満たすものです。

(1)優越的な関係を背景とした
(2)業務上必要かつ相当な範囲を超えた言動により
(3)就業環境を害すること(身体的もしくは精神的な苦痛を与えること)
 ※適正な範囲の業務指示や指導についてはパワハラに当たりません。

【職場】とは、「労働政策審議会建議」においては、業務を遂行する場所を指しますが、通常就業している場所以外の場所であっても、業務を遂行する場所については「職場」に含むことを指針で示すことが適当とされています。

【優越的な関係】とは、「職場のパワーハラスメント防止対策に関する検討会報告書」においては、パワハラを受ける労働者が行為者に対して抵抗又は拒絶することができない蓋然性が高い関係に基づいて行われることで、例えば以下の場合も含むとされています。
⇒職務上の地位が上位の者による行為・同僚又は部下による行為で、当該行為を行うものが業務上必要な知識や豊富な経験を有しており、当該者の協力を得なければ業務の円滑な遂行を行うことが困難であるもの その他、パワーハラスメントに関する紛争が生じた場合、調停などの個別紛争解決援助の申出を行うことができるようになります。
※いずれも詳細については、今後指針において示される予定です。

また、セクシュアルハラスメントについては、法改正により防止対策の実効性が向上します。
具体的内容は以下の通りです。
※(1)(2)(4)はパワーハラスメント、マタニティーハラスメントも同様

(1)セクハラ等の防止に関する国・事業主・労働者の責務が明確化されます。
  ※セクハラ等は行ってはならないものであり、事業主・労働者の責務として、他の労働者に対する言動に注意を払うよう努めるものとされています。

(2)事業主にセクハラ等に関して相談した労働者に対して、事業主が不利益な取扱いを行うことが禁止されます。

(3)事業主は、自社の労働者が他社の労働者にセクハラを行い、他社が実施する雇用管理上の措置(事実確認等)への協力を求められた場合にこれに応じるよう努めることとされます。
  ※あわせて、自社の労働者が他社の労働者等からセクハラを受けた場合も、相談に応じる等の措置義務の対象となることを指針で明確化します。

(4)調停の出頭・意見聴取の対象者が拡大されます。
  ※セクハラ等の調停制度について、紛争調整委員会が必要を認めた場合には、関係当事者の同意の有無に関わらず、職場の同僚等も参考人として出頭の求めや意見聴取が行えるようになります。

施行時期:公布後1年以内の政令で定める日
※パワーハラスメントの措置義務については、中小企業は、公布後3年以内の政令で定める日までの間は努力義務となります。
※改正法は2019年6月5日に公布。

  ハラスメントは、受けた職員の精神や身体の健康に影響を及ぼすだけでなく、職場の士気の低下、事業所(企業)の信頼性の失墜など、さまざまな影響があります。 法律の施行時期に関わらず、できることから取り組みを行い、ハラスメントのない職場づくりに努めましょう。

(2019年8月度編集)

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