診療報酬改定検証 ~地域包括ケア病棟(2)

「200床未満」中小病院への誘導を更に強化、自宅等からの「直接の患者受け入れ」の動きが進む?

ポストアキュートからサブアキュートの機能強化へ“潮目”が変わる

2014年度診療報酬改定で「地域包括ケア病棟入院料・入院医療管理料」(以下、同入院料に略)が新設された時には、(1)急性期治療後の患者の受け入れ(ポストアキュート)(2)自宅等で治療する患者等の受け入れ(サブアキュート)(3)在宅復帰支援‐の機能が期待されていたのは周知の通り。

しかし、今改定から厚生労働省は地域包括ケア病棟への患者受け入れに対し、(1)ポストアキュートよりも(2)サブアキュートや(3)在宅復帰支援を、より重視する方向性が明らかになった。要するに“潮目”が変わったことになる。

2017年の中医協の議論では、地域包括ケア病棟への転院に関して、「自院の急性期病棟からの転院」が90%を超えており、厚生労働省はサブアキュートの機能強化と、そのための連携の推進が喫緊の課題となっていた。その結果として、前回紹介した診療報酬改定で、同入院料1・3に対して自宅等からの入棟・緊急患者の受け入れ、在宅医療の実施や介護サービスの提供等を織り込んだアウトカム評価が導入されることになった。

そうした流れを象徴するのが、「救急・在宅等支援病床初期加算」(以下、同加算)見直しだ。同加算は「地域包括ケア病棟入院料・入院医療管理料」を対象にした加算であり、従来は「他の医療機関の一般病棟及び自宅、介護老人保健施設、特別養護老人ホーム、軽費老人ホーム、有料老人ホームから入院患者を受け入れた」場合に150点の加算が算定可能だった。今改定からは、一般病棟からの受け入れと、自宅や介護医療院等の自宅扱いとなる施設からの受け入れを区別・整理して、「在宅患者支援病床初期加算」を新設。従来の同加算は150点だったが、「在宅患者支援病床初期加算」は300点と、自宅や介護医療院等の自宅として扱われる施設からの受け入れを2倍に高評価した。

この他、同入院料1算定が「200床未満病院」に限定されたのと同様の考え方で、「地域包括ケア病棟の届出が1病棟までに制限される医療機関が、従来の許可病床「500床以上」から「400床以上」に拡大されたことも見逃せない改正点だ。これらの見直しは「地域包括ケアは国公立病院や高度急性期医療を主体とする中核病院よりも、200床未満の在宅医療や介護サービス等にも力を注ぐ中小民間病院等に担って欲しい」とのメッセージが明確に伝わってくる改正ポイントと言える。厚生労働省は急性期病棟・病床を地域包括ケア病棟・病床等に移行したいものの、必ずしも全ての医療機関に求めているわけではないことが分かる。

これらの改定を受けて、ケアミックス型中小民間病院の中には、自院の急性期病棟の退院支援機能を強化することに加えて、急性期病棟等から従来受け入れていた圧迫骨折等の一部の疾患患者に対しては、直接自宅等から受け入れる等の体制見直しの動きが、徐々に顕著になってきている。

「特別な関係」にある居住系介護施設の連携要件緩和は、民間病院に朗報か!

「当法人では200床未満のケアミックス型病院を中心に、介護老人保健施設やサービス付き高齢者住宅、複数の特定施設、居宅・訪問介護事業所等を運営し、自己完結型ネットワークを形成してきました。今改定から、医介連携(医療と介護の連携)に関しては、同一法人による運営等の要件緩和も含めて重点評価されたのは、大きな追い風になりました」と語るのは北陸地域の医療法人本部部長。

前回紹介したように、今改定から地域包括ケア病棟の在宅復帰要件が見直され、介護老健施設と療養型が在宅復帰率にカウントされないとの要件の厳格化が実施された。

しかし、一方で同一医療法人や同一グループの介護施設等との「特別な関係」にある居住系介護施設(介護医療院を含む)への転棟は在宅復帰率としてカウントされるようになった。これは、自己完結型ネットワークにより医介連携を進め易い環境を作ってきた医療機関にとってはプラスに働くことは間違いない。

また、最上位ランク・同入院料1の施設基準には選択要件の中に「介護保険における訪問介護、訪問看護、訪問リハ、介護予防訪問看護・リハビリ等の介護サービス事業を同一敷地内で実施していること」との記述がある。法人は別であっても、現在病院と「同一敷地内」にある介護サービス事業所の殆どは病院と「特別な関係」にある医療機関の多いことは、言うまでもないだろう。

厚生労働省は地域包括ケアシステムの構築に向けて、地域包括ケア病棟を有する病院と、近隣に位置する介護サービス事業所との連携を密にしていかねば、「在宅での生活を支える仕組み」を構築するのが難しいことに気づき、より現実的な対応を取り始めたということだ。“遅きに失した”という感もあるが、特に地方においてはライバル関係にある民間医療法人・介護施設同士の連携が容易ではないことを示しているとも言える。

看取り指針の作成と認知症対応が求められる時代に

さて、最後に前回に紹介した実績要件の求められる同入院料1・3に関して、触れなかった重要な改正ポイントについて、今回言及したい。

同入院料1・3だけでなく、療養病棟入院料にも共通するが、厚生労働省の『人生の最終段階における医療の決定プロセスに関するガイドライン』等の内容を踏まえて、看取りに関する指針、いわゆるターミナル計画を作ることが求められる。 この他、同病棟では「認知症等の患者が一定割合以上、入院する病棟において夜間の看護職員の配置」を評価する「看護職員夜間配置加算」(55点・1日につき)を新設。

施設基準としては、(1)夜勤を行う看護職員の数は「16対1以上」(2)一般病棟用の重症度、医療・看護必要度の基準(B項目「診療・療養上の指示が通じる」または「危険行動」)を満たす患者が3割以上入院している(3)看護職員の負担軽減及び処遇の改善に資する体制整備‐の3点になる。

しかし、「16対1以上」をクリアしていた場合でも、各病棟における「夜勤の看護職員の最小必要数を超えた3名以上」でないと算定出来ないので注意が必要だ。 いずれにせよ、地域包括ケア病棟でも認知症患者の受け入れに対応する機能整備が今後、より一層必要になるのは間違いない。

2016年度改定で導入された「認知症ケア加算2」を算定していない地域包括ケア病棟は、届出を目指して頂きたいと考えるし、認知症ケアに関わる診療報酬が、今後更に拡充されていくことも予想される。

(2018年08月10日)

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