着眼点は「重症度、医療・看護必要度」の見直し

前回改定の重要ポイントは「実績評価」と「重症度、医療・看護必要度II」の導入

中医協での2020年度診療報酬改定に係る第二ラウンドの議論は、2019年9月11日から本格的にスタートしたが、本稿では「令和」初となる同改定に関する議論の内容や提示された資料(データ)等から、類推される改正ポイントについて考えてみたい。あくまでも現段階(2019年11月10日段階)の予測に過ぎず、実現するかは未確定であることはお断りしておく。

今回は急性期病棟、つまり「急性期一般入院基本料」に絞り、言及させて頂く。

その前に、2018年度改定の重要な改正ポイントを振り返ってみたい。従来の一般病棟入院基本料(「7対1」、「10対1」、「13対1」、「15対1」)が再編・統合され、従来の「7対1」と「10対1」病棟が合体、「急性期一般入院基本料」へと再編された。「13対1」、「15対1」も合体し、「地域一般入院基本料」へと再編された。そして、前者の「急性期一般入院基本料」の診療報酬は7段階にランク分けされ、急性期一般入院料1~7までの区分に改正された。

最上位ランクの入院料1は従来の「7対1」と同じ1,591点の点数設定。最下位ランクの入院料7は「看護必要度加算1~3」の付かない「10対1」と同じ1,332点の設定となる。入院料1と7が従来の「7対1」・「10対1」病棟に相当する診療報酬であり、その間の入院料2から5までは従来の「7対1」と「10対1」の中間に設定された病棟で、「入院料2・1,561点」「入院料3・1,491点」、「入院料4・1,387点」、入院料5・1,377点」、「入院料6・1,357点」の点数設定であるのは周知の通り。

そして、入院料1~7は看護配置等の体制を基本にする「基本的な診療にかかる評価」(基本部分)と「診療実績に応じた段階的な評価」(実績部分)からなり、「実績部分」の指標は「重症度、医療・看護必要度」(以下、看護必要度に略)を基準としたことが重要な改正ポイントとなった。その改正に伴い「10対1」病棟が算定可能だった「看護必要度加算1~3」は廃止された。

前述の「基本部分」は「看護配置10対1以上」、「平均在院日数21日以内」が入院料2~7の要件となった。そして見逃せないのが、この「基本部分」と「実績部分」の二階建て構造になったこと。要するに、診療実績データにより「必要度」基準値に係る判定が要件の中に組み込まれたのが大きな改正ポイントである。「必要度」の該当患者割合が、急性期医療を担う病院経営の方向性を決定するリトマス試験紙として採用されたわけだ。

そして、もう一つの急性期医療を巡る重要な改正ポイントは、看護必要度に新機軸が導入されたことだ。従来までの測定の仕方を「看護必要度I」として扱い、新しく「診療実績データ」を用いた評価「看護必要度II」を導入し、いずれかの選択が可能になった。

新しく導入された「看護必要度II」はA項目およびC項目に関して、「DPCのデータのEFファイルを用いた」評価方法であり、レセプト・コンピュータに入っている既存データから看護必要度割合を抽出して行う測定方法である。この測定方法では看護師の業務負担が軽減されるが、オンタイムで入力しなければ、(看護必要度I)の測定方法と比較して、平均5%程の誤差が生じ、低くでてしまうことから、患者割合の誤差を是正する措置も導入された。

前回改定では入院料2および3に限定して、(看護必要度II)の採用が義務付けられたが、2018年末時点で「“7対1”届出病院は2020年3月末まで(看護必要度I)による評価も可能にする」との経過措置が設けられた。2020年4月1日には経過措置が終了し、厚生労働省は入院料1(従来の「7対1」病棟)も(看護必要度II)の測定方法への全面切り替えを予定しているが、果たして同省の思惑通りに移行が進むのだろうか?

いずれにせよ、前述の理由で、看護必要度の内容が今後の病院経営に大きな影響を与えるのは間違いなく、次回改定で予想されるように、看護必要度が、どう改正されるのかが着眼点となる。これらの前提を踏まえて、今回と次回の2回に分けて、中医協・第二ラウンドにおける議論を検証していきたい。

医療現場で伸びない「“7対1”からの撤退」や新評価方法の採用

2018年度診療報酬改定では、入院料1の看護必要度が従来の「7対1」の25%から30%に引き上げられた。さらに在宅復帰率「80%以上」が要求されるが、入院料2~7は在宅復帰率要件は求められず、平均在院日数も入院料1は「18日以内」が要件であるのに比べ、入院料2~7は「21日以内」とハードルは低い。

入院料1に限定して、極めて高いハードルを課したのは、周知のように国は入院料1である「7対1」病床を“少数精鋭”に絞り込みたいということ。特定機能病院や地域医療支援病院等の高度急性期機能を有する病院等に集約し、当面、それら以外の病院を早急に退出させ、入院料2・3に集約していきたいとの思惑が見えてくる。

厚生労働省は2025年における病床の必要量として、全国ベースで高度急性期13万445床、急性期40万632床、回復期37万5,246床、慢性期28万4,488床の合計119万821床の推計値を公表。2016年の病床機能報告は高度急性期が17万254床、急性期58万4,416床と顕著に過剰であることから、スピード感を持って、これら病床の縮小や他機能病床への転換を推し進めたいのは明らかだ。これは、社会保障費削減に必死とも言える財務省の意向でもあるのは間違いない。そうした視点から、2019年に入ってからの中医協における議論の内容を見ていくことにする。

さて、2018年度改定の実施前に一般病棟「7対1」届出病棟のうち、2018年11月1日時点で、約96.5%の病院が「7対1」相当の入院料1を届出していたことが分かった(n=1,801)。一方、「入院料1」届出以外では、「入院料2」届出が2.6%、「入院料3」届出が0.5%と少数に過ぎなかった。要するに、2018年11月時点のデータではあるが、前述のような厚生労働省の思惑通りには進捗していないことが明らかになった。

「入院料1」届出病院に同1を届出した理由について問うた設問(n=314)では、単一回答・複数回答のいずれも「改定前の一般病棟(7対1)相当の看護職員配置が必要な患者が多い(医療需要がある)ため」との回答が多くを占めた。単一回答では43.0%、複数回答では76.8%を占めていた。

それに拮抗するのが「施設基準を満たしており、特に転換する必要を認めない」。単一回答では40.8%、複数回答では86.6%と圧倒的な高さ。この他に、複数回答として高いのが「入院料1の方が、他の病棟と比較して経営が安定するため」が41.4%。この回答はある面、病院経営面のホンネとも言えるが、「入院料1から他の病棟等に転換すると、地域で連携している医療機関からの要請に応えられなくなる懸念があるため」(39.5%)が次に続く。これらの回答から推察されるのは、従来から「7対1」病棟を運営していた病院の多くは入院料1から同2以下の入院料にランクダウンした場合に、「病院経営の安定性が損なわれたり、連携する他の医療機関からの要請に応えられなくなる」ことを懸念していることが分かる。

2018年度改定前後に厚生労働省に近い学者や、同省絡みの情報収集に余念のない医業経営コンサルタントが、医療経営セミナー等で「“7対1”からの撤退によるメリット」を強調していたが、実際の医療現場では極めて冷静に今後の先行きを見ながら、急性期病棟の再編については、慎重に対応していく姿勢が伺える。医療現場では、いずれ同省は“梯子を外す”のが目に見えているから、「安易な政策誘導には乗らない」との見方も可能だ。

さて、もう一つの重要な改正点・看護必要度(II)の届出病院も入院料1では19.3%、入院料4(8.8%)、入院料5(10.9%)入院料6(10.3%)、入院料7(1.4%)と、導入の進まない現状が明らかになった。2018年11月段階の調査であり、現段階の採用病院数はさらに増えていると推定されるが、それでも2020年4月には、入院料1も新評価方法への移行を目指す同省にとっては「見込み違い」であるのは明白だ。

厚生労働省の巻き返しとして、2020年度診療報酬改定では、一般病棟についてはさらに、「“7対1”からの退出」を加速させる診療報酬政策を検討しているのは間違いない。

また、マクロ的に政府は2020年度診療報酬改定で全体ではマイナス改定にする方向で検討に入ったが、医療費削減に執念を燃やす財務省は、薬価だけでなく本体部分にもメスを入れ、「全体で2.5%以上のマイナス改定を目指している」(専門誌記者・談)ようだ。厚生労働省族議員・医療関連団体等と財務省との攻防は、既に始まっている。

(医療ジャーナリスト:冨井 淑夫)