病院・4月度の医業収入は前年比-10.5% 「病棟閉鎖」病院の医業利益率は-16.8%と深刻

2020年5月18日、一般社団法人日本病院会、公益社団法人全日本病院協会、一般社団法人日本医療法人協会の3病院団体は合同で新型コロナウイルス拡大による「病院経営状況緊急調査」(速報)を発表した。当該調査は三団体に加盟する全病院(4,332病院)を対象に5月7日から5月15日の期間に実施され、5月15日現在の有効回答数は1,141病院、有効回答率は26.3%だった。

その内訳としては、(1)「帰国者接触者外来を設置している」のは29.0%、(2)「新型コロナウイルス感染症患者の入院を受け入れている」のは26.3%、(3)「一時的に病棟閉鎖」したのは13.7%。

4月の医業収入を前年(2019年)と比較すると、有効回答全病院では-10.5%。前出(2)-12.7%、(3)-14.9%と深刻な数字。医業利益率では全病院平均で同-9.0%、(2)-11.8%、(3)-16.8%と同感染症患者の入院受け入れや、感染を怖れて一時的な病棟閉鎖を余儀なくされた病院の苦境が伺える(図表1・2・3)。

「帰国者・接触者外来の設置」や「新型コロナ患者の入院受け入れ」を行っている病院の多くは大学病院や国公立病院、民間でも社会医療法人病院等の高度急性期病院が多くを占めていると推察される。

ある都心部の二次・三次救急を担う中核病院(社会医療法人300床以上)の事務部長は、「実際にHCU、ICU等への新型コロナ患者受け入れに対して“倍相当”の報酬評価が導入されたが、実際の受け入れになると院内感染のリスクは避けられず、当該患者を受け入れる病棟は全てコロナ患者専用病棟にするだけの覚悟がいる。病院経営的には当院全体の機能再編の中で考えていく必要があるし、感染防止に向けた動線分離等のために一部施設のリニューアル等も余儀なくされるかもしれない。県からの依頼があれば政策医療を担う社会医療法人病院として検討するつもりだが、感染管理に熟練した医師、看護師等の増員等、マンパワーをより充実させることなくして実現は不可能だろう。診療報酬が2倍になるとしても病院側の負担や、起こり得るリスクを想定すると決して十分ではない。救急医療を担う中核病院で、収益増を目的に新型コロナ患者受け入れを目指す医療機関等、まずないだろう」と指摘する。

前出の調査でも医業費用の中で占める「給与費」が、有効回答全病院で前年比1.3%、(2)「新型コロナ患者受け入れ病院」で1.4%、(3)「一時的病棟閉鎖」病院では2.3%と顕著に上がっている。(2)と(3)については、「その他経費」も各々、0.3%、1.5%と増加し負担が重くのしかかっていることが分かる。

某民間病院院長(200床以上)は「玄関スペースには来院者の体温を測るために数名の看護師を配置する必要があるし、フェイスシールドやガウン等の防護具も多数、準備しなければならない。4月以降は、これらのコストが膨張し、私たちのような中小民間病院には負担が重い」と頭を抱える。

医療・介護事業者等に対する新型コロナ患者に係わる消毒・洗浄等の施設のメンテナンスに関わるコスト等は、「医療・介護総合確保基金」等、各都道府県の補助金が拡充されつつあるので、使える補助金を有効に活用して感染防止対策を進めて頂きたいと考える。

受診への「萎縮」マインドが強まり 在宅高齢者の「検死」件数が増加

中小病院や診療所等に影響が大きいのは、地域住民に感染への恐怖から受診への「萎縮」マインドが強まってきたこと。都市部等では、医師自体が感染を怖れての診療所の休止や廃業等も顕在化してきたが、そもそも医療資源の少ない地方の過疎地等では、かかりつけ医療機関の閉鎖・廃院等が起こると、慢性疾患を有する高齢患者の安心・安全な医療提供体制が失われてしまうことになる。

新型コロナ患者の受け入れを行っていない医療機関においても経営的な打撃が小さくはない。人口約8万人の地方都市(高齢化率33%)に在るケアミックス型病院(医療法人170床)のB院長に新型コロナによる直近の影響について尋ねた。

「確かに外来患者の受診は連日100人(-35%)前後減少しており、実際に状態が悪くても感染を怖れて来院しないお年寄りが増えている。その結果、この地域でも高齢者が突然亡くなることによる検死件数の増加が目立ってきた。私たちも当院の訪問看護師、MSW、保健所の保健師等を通じて高齢者には少しでも具合が悪ければ当院の救急外来を受診して頂くようにお願いしている。在宅のお年寄りは日がな一日テレビを見て過ごすことが多いのだが、テレビのワイドショーで専門家等が感染への恐怖を過剰に煽るのも問題。高齢者の“ステイ・ホーム”意識が在宅死を助長している一面もあることを知っていただきたい。」

地方の中小民間病院等では一定の外来患者数の確保が、病院経営の安定を維持する“原動力”になっている事実は無視できない。当該病院でも外来患者が30%以上減少したことで「外来から入院への移行」という通常の流れが作り難くなった。

「地域でかかりつけ病院的な役割を担っている当院の外来では、慢性期の高齢患者がほとんどを占めており、初診患者の割合は低く外来の診療単価は決して高くはない。ただし外来患者数減少の影響により、従来は90%近くあった病床稼働率が80%を切ってしまった。その結果、入院収入のマイナスと救急患者受け入れ件数の減少により5月度は相当な収益の落ちこみが見込まれる。私たちの自治体では新型コロナ感染患者は数名しか出ておらずクラスターも起こっていないのだが、コロナ災禍における患者側の心理的な受診抑制意識の高まりが病院経営を直撃している」

と、B院長は不安を隠せない。当該医療法人では月末に開催した理事会で経営状況が回復するまでの間、常勤理事全員の報酬減額を決定した。

現政権は5月27日、新型コロナウイルスへの総額31兆9,114億円の今年度第2次補正予算案を閣議決定した。その中には、「検査体制の強化」や「新型コロナ患者に対応する医療・介護従事者に対する最大20万円の慰労金支給」等が織りこまれているが、今回の新型コロナウイルス感染症の医療経営に与える影響は大きく、今後の医療提供体制に大きく影響を与えるものと考えられる。

(医療ジャーナリスト 冨井 淑夫)

続きの記事「<特別号>病医院経営緊急事態宣言(下)」はこちらからお読みいただけます。
https://carnas.njc.co.jp/youtei/b-030/