現在、厚生労働省の医道審議会・医師分科会において、一定の基準を満たした医学生に侵襲的な医行為の実施を認める「臨床実習生」資格化の議論が進められています。将来的に医師法を改正し、医師法で共用試験を位置づけた上で、「スチューデント・ドクター」の資格を与えて、臨床実習においては一定の医行為を可能にするというものです。

厚生労働省は「スチューデント・ドクター」による医行為の実施が法的に位置づけられれば、「スチューデント・ドクター」が①医育機関等において診療チームの一員であること②診療に当たって事前に一定の準備ができていること③医

行為を実施することが患者にとって明確になり、必要に応じた同意を得られやすくなることで、診療参加型臨床実習が促進されること-等に期待を寄せているようです。

ところで、当クリニックは小規模ながら、当施設で実施している専門医療や、在宅医療の評価が高く、現場で学びたいと希望する研修医を一部受け入れています。しかし、仮に資格化されたにせよ医師免許のない「スチューデント・ドクター」を受け入れることには、どうしても抵抗があります。例えば、無免許で医行為を行わせて医療事故が起こった場合、誰が法的責任を負うことになるのでしょうか。私見ですが、医師不足を解消するために、こうした資格を活用するというのは“本末転倒”と感じています。

(九州地方・専門クリニック・有床診療所/8床・院長・58歳)

A.厚生労働省は「民事上の責任は一義的には医療機関が負う」と説明

「スチューデント・ドクター」導入は「臨床実習」に限ったもので、医師業務の補完として、どこの医療機関でも活用できるものではありません。

「医学生に対し診療参加型臨床実習を進める」との教育的観点から導入されるもので、「医師の指導及び監督」の下に行われるのが前提です。厚生労働省は断言してはいませんが、おそらく大学病院、臨床研修指定病院等の教育的役割を果たす医療機関が中心であり、資格化が実現したとしても、小規模診療所で導入されるケースはほとんどあり得ないと想定します。

それらを踏まえて同省は、医療事故が起こった場合の対応として、「診療契約は患者と医療機関の間で締結されるものであり、勤務医の場合と同様に、民事上の責任は一義的には医療機関が負う」と説明しています。

そして、医師免許を持たない医学生が診療行為を行う場合、「患者の同意を得る必要があることは、社会通念上、必要」としています。報告書では「患者側の同意取得については、「包括同意を文書、または口頭で得ることが望ましい」とされています。しかし、現状では同意取得の困難さが指摘されており、医療現場で「スチューデント・ドクター」が円滑に導入されるには、まだまだ時間がかかりそうです。医療現場の「医師不足」への安易な対応ではないことは、ご理解下さい。

(2019年12月度編集)