Q.パワハラ防止措置に対する法整備で医療機関に想定されるリスクとは?

2019年5月の労働施策総合推進法の改正により、パワーハラスメント(パワハラ)防止措置に対する法律が整備されました。中小企業事業主として扱われる私たちのような民間病院も、今回の法制化により2022年4月までに新しいパワハラ指針に則った体制づくりを備える必要があります。

ところで、私たち経営陣、あるいは中間管理職が、労働者である病院職員からパワハラによる民事訴訟を起こされた場合、どのような不利益が生じる恐れがあるのでしょうか?

(関東地方都市部 医療法人病院(250床前後) 働き方改革推進室長・45歳)

A.民事上の賠償責任や悪質なケースには、刑事責任が発生する可能性があります。

管理職のパワハラにかかわる病院組織の懲罰としては、懲戒処分、配置転換、考課上の不利益等。医療機関にとっては、パワハラが発生した段階から相談対応、問題解決への時間、労力、費用等に、多大な経営資源を消費することが危惧されます。仮に裁判になると一審だけでも2年以上の審理期間を要することにもなりかねず、裁判等の司法手続きで管理者、担当者、当事者に生じる負荷の大きさは計りしれません。

医療機関側は「職場配慮義務違反による民事・刑事上の責任」が問われる場合もあり、パワハラ問題が報道されたり、SNSで情報が拡散した場合は、二次被害として過大な風評被害に遭うリスクを抱えています。そうした場合、病院のイメージダウンや信用失墜が甚大であることが想定され、医療機関経営の存続を危うくするケースもあります。セクハラも同様ですが、「パワハラを起こした病院」としての汚名により、職員の士気低下やリクルート等でも大変な影響を被ることもあり得ます。

2017年に全国医師ユニオンが実施した1,803人の勤務医へのアンケート調査では、女医が職場で「パワハラを受けた」経験者が約3人に1人、「セクハラを受けた」のが約4人に1人。自治労連が2018年に実施した1万2,725人の自治体病院職員への「医療現場実態調査」では、「看護職員の約2割がセクハラを受け、4割を超える職員がパワハラを受けた」と回答。

パワハラ・セクハラの被害者がSNS等で声を上げる時代となり、医療界でも「Me Too運動」は「対岸の火事」ではないと、ご理解下さい。

(2020年10月度編集)

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