Q.「医師の働き方改革」の議論、副業・兼業を行う医師に対し(B)水準〔地域医療確保暫定特例水準〕拡大の意味について

現在、厚生労働省では兼業・副業をする「医師の働き方」に関する議論が活発化していると聞きました。当院の常勤医でも多くの医師が、当院以外の医療機関で兼業勤務を行っており、私自身も以前に勤務した公的病院に赴き、必要に応じてオペを行っています。ところで、労基法の規定では副業・兼業を行う労働者の労働時間は通算されます。(A)水準が適用される業務に従事する医師は、通算した「時間外 休日労働時間が年間960時間に達した場合は、時間外労働が行えない」とされています。この(A)水準の960時間ルールが最近の同省の議論では、変更される方針にあると聞きました。詳しく教えて下さい。

(都心部 医療法人病院(地域医療支援病院 300床以上)副院長 心臓外科専門医・47歳)

A.具体的には、(A)水準の960時間ルールが変更されるのではありません。

「医局からの指示や要請によって大学病院から関連病院等に医師が派遣される」ケースや、「地域医療支援病院から医師の少ない地域に派遣されている」ケース等、「地域全体で医療提供体制の確保」のために、時間外・休日労働が960時間を超えてもやむを得ない場合があります。実際に大学病院等の勤務医の多くは前述の理由で時間外・休日労働時間が「960時間を超過している」実態が明らかになってきました。

そのため、前出・類型の場合「副業・兼業先での労働時間と通算した時間外・休日労働は年1,860時間まで可能」とすることが、2020年9月30日に開催された「医師の働き方改革の推進に関する検討会」では、委員の多数から了承されました。すなわち、(A)水準・960時間ルールの改正ではなく、(B)水準〔地域医療確保暫定特例水準〕の対象医療機関を拡大し、やむを得ない場合は特例的に「副業・兼業を通算して、年間1,860時間までの時間外労働を認める」ことが決定したわけです。

個々の医療機関で年間960時間を超えて時間外・休日労働を行うには、前出・類型の医療機関は(B)水準の指定を受ける必要が出てきます。勿論、「こうした労働態様に従事する医師について十分な健康確保を図る必要があること」や、「当該病院等で(A)水準を適用すると時間外・休日労働時間を960時間以内に収めるために、常勤勤務先医療機関による派遣医師の引き上げに繋がる恐れ」等が、会議では指摘されています。ただ、通常勤務する病院で「(A)水準が適用される業務に従事しているにも係わらず、副業・兼業を理由として、自院での36協定に基づく時間外・休日労働時間の上限が緩和される」のは適当ではないとの判断から、「この類型でのみ(B)水準を受けた場合の個々の医療機関における36協定に定める時間外・休日労働時間の上限は年960時間まで」と規定されることになりそうです。

(2020年10月度編集)

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