10年後も健康でいるために!国が取り組む健康日本21とは
日本ではこれまで、国を挙げてさまざまな健康増進政策が行われてきました。その成果もあり、国民の平均寿命は2017年には男性が81.09歳で世界第3位、女性が87.26歳で世界第2位と世界でもトップクラスへと躍進。最近話題になる健康寿命も同様にトップクラスのレベルに達しています。さらなる国民の健康増進を目的として、国の健康政策として現在行われているのが「健康日本21」という取り組みです。
2000年から行われているこの政策は、2011年に見直しがされ、現在は健康寿命の延伸をはじめとした5つの基本的な方針が定められ、日本の健康社会実現を目標としています。ここでは、これまでの経緯から現在の目標や取り組み内容などをご紹介します。5年後、10年後のご自身やご家族の健康生活の指標にしてください。
健康日本21とは
政府は、2013年から第二次の「健康日本21」をスタートしています。正式には「21世紀における国民健康づくり運動」と称するこの取り組みは、第4次国民健康づくり対策に位置づけられる施策です。近年の日本における健康施策の開始は1978年までさかのぼります。同年に始まった第1次国民健康づくり対策では市町村への保険センターの整備や健康検査の充実、保健師といったマンパワーの充実が図られました。
続く1988年から始まった第2次国民健康づくり対策では、健康増進施設の推進や運動指針の策定など健康習慣の普及に重点を置きました。そして、2000年からの第3次国民健康づくり対策時に「健康日本21(第一次)」と名づけられた運動が始まりました。「健康日本21」では、「1次予防」という観点を重視し、具体的な目標設定および評価が行われました。
健康日本21のこれまでの取り組み
健康日本21は、疾病全体のなかでも特に、生活習慣の変化や急速な高齢化によるがんや心疾患、脳血管疾患、糖尿病などの生活習慣病やその原因の改善について目標を選定し、国民全体が主体的に取り組むことを目的としています。目標設定は、1.栄養・食生活、2身体活動・運動、3.休息・こころの健康づくり、4.たばこ、5.アルコール、6.歯の健康、7.糖尿病、8.循環器病、9.がんの9分野で、それぞれの細かい目標を設定しています。
例えば糖尿病であれば、成人の肥満者の減少、日常生活における歩数の増加、循環器病であれば食塩摂取量の減少や運動習慣者の増加、といった具合です。それぞれの項目について都道府県や市町村が計画と目標を策定し、実行しました。
取り組みの結果
取り組みは2011年に最終評価が行われました。9分野59項目に及ぶ目標のうち、全体の6割で「目標値に達した」「目標値に達していないが、改善傾向にある」という結果となり、一定の改善がみられたことがわかります。目標値に達した項目としては「メタボリックシンドロームを認知している国民の割合の増加」「高齢者で外出について積極的態度をもつ人の増加」「80歳で20歯以上、60歳で24歯以上の自分の歯を有する人の増加」などが挙げられています。そして、目標値に達していないが改善傾向にあるものとして「意識的に運動を心がけている人の増加」「食塩摂取量の減少」「糖尿病やがん検診の促進」「喫煙が及ぼす健康影響についての十分な知識の普及」といった項目が改善しています。
逆に悪化しているものとして、「糖尿病合併症の減少」「日常生活における歩数の増加」などがあります。これらの悪化している項目は、変わらないという結果が出た「自殺者の減少」「多量に飲酒する人の減少」「メタボリックシンドロームの該当者・予備群の減少」とともに、次の施策「健康日本21(第二次)」の改善目標設定に活かされています。
健康日本21(第二次)の基本方針
健康日本21(第二次)は、健康日本21(第一次)への取り組み結果を踏まえて策定され、2013年から実施されています。10年後に目指す姿として「全ての国民が共に支え合い、健やかで心豊かに生活できる活力ある社会」と基本方針を総論づけています。政策の柱は以下の5つです。都道府県や市町村はこの基本方針に沿い計画を立案。独自に重要な課題を選択して目標を設定しています。
健康寿命の延伸と健康格差の縮小
健康日本21(第二次)の中心課題として、健康に日常生活を過ごすことのできる健康寿命は欠かせないものです。2022年までに平均寿命の増加分を上回る健康寿命の増加と、都道府県間の健康格差の縮小を具体的な目標にしています。
主要な生活習慣病の発症予防と重症化予防の徹底
がんや、脳血管疾患・虚血性心疾患、高血圧、脂質異常症、糖尿病といった生活習慣病の予防と重症化予防のため、健康診断や健康指導の受診率を高めることを目標とします。また、治療継続者の増加、メタボリックシンドロームの減少、COPDの認知度の向上も目指しています。
社会生活を営むために必要な機能の維持及び向上
社会生活を健全に送ることができるように、子どもの出生や生活習慣、高齢者の社会参加、足腰やロコモティブシンドローム、認知症対策について認知度や現状の向上・改善を目標とします。また、幅広い年代のメンタルヘルス環境の向上や自殺者の減少も目指します。
健康を支え、守るための社会環境の整備
健康対策に取り組む自治体や企業や民間団体の拠点増加を通じて、国民が健康づくりに積極的に参加できる環境を整えるとともに、地域のつながりの強化をすることも目標のひとつです。
栄養・食生活、身体活動・運動、休養、飲酒、喫煙及び歯・口腔の健康に関する生活習慣及び社会環境の改善
食生活や栄養の向上、運動や身体活動・休息、喫煙や飲酒、口腔内環境の改善について具体的数値を設定し目標としています。
健康日本21の取り組み事例
取り組み事例
健康日本21では「健康寿命をのばそう!」をスローガンにしたスマート・ライフ・プロジェクトを開始。これは国民全体が人生の最後まで元気に健康で楽しい毎日を送ることを目標にした国民運動です。適度な運動、適切な食生活、禁煙という3つのアクションだけでなく、自らを知るための健診・検診が加わっています。
また、個人への啓蒙だけでなく、健康づくりに取り組み自治体や企業・団体への支援も推進。「健康寿命をのばそう!アワード」では、毎年優れた取り組みを行っているグループを表彰しています。2017年の第6回には70団体から応募があり、18件の企業、団体、自治体に対し《生活習慣病予防分野》《介護予防・高齢者生活支援分野》《母子保健分野》の3つのカテゴリーの優秀な取り組みへ表彰を行っています。
年次推移
国立健康・栄養研究所では、健康日本21の分析評価事業を行っており、2015年、2016年にかけての年次推移が公表されています。 評価結果では、がん検診や特定健康診断の受診、特定保健指導の実施率の向上がみられます。こころの健康に関する項目では小児人口10万人当たりの小児科医・児童精神科医師の割合について増加のほか、自殺者の減少がみられます。
高齢者の健康に関する項目では、ロコモティブシンドローム(運動器症候群)を認知している国民の割合の増加が、平成25年当初に比べ改善しているのがわかります。 一方、運動やスポーツを習慣にする子どもの割合が減っているほか、メタボリックシンドロームや糖尿病有病者は増加傾向にあります。健康に対する意識は高まっているものの、不安な材料もあるといえるでしょう。
まとめ
戦後の健康対策によって国民全体の寿命が伸び、平均寿命、健康寿命ではトップクラスへと躍進しています。しかし、健康寿命と平均寿命にはまだ差があるのが現状です。個人の健康は、各個人の仕事や生活面はもちろん、国全体で見ると社会保障費の増加など社会全体に影響します。 国の健康政策「健康日本21」は第二次段階に入り、個人だけでなく地域や社会全体も見据えた取り組みへとなっています。現在、こうした取り組みによって健康への啓蒙は浸透しているといえます。しかし、まだ生活習慣病の増加や次世代の健康など不安な要素もあります。個人と企業・社会全体が協力して、運動、適切な食生活、禁煙、健診・検診の受診を実行し、病気の予防、健康増進への取り組みを継続していくことが必要といえるでしょう。
参考: