病院・クリニックのためのコロナ禍の経営/クラウド戦略(2)
※本記事は、下記記事の続きです。ぜひ併せてお読みください。
病院・クリニックのためのコロナ禍の経営/クラウド戦略(1)
新型コロナウイルスの感染拡大を受けて、院内感染を恐れ「患者様が受診を控える」行動が出ています。その対策として、コロナ禍では「感染防止策」が重要であり、それを患者様に知らしめるためにホームページなどの活用が重要になっています。また、コロナ禍は急速なIT化を求めています。2010年の医療分野のクラウド解禁以来、医療でもクラウドが当たり前の時代が到来しようとしており、様々な医療情報システムのクラウド化が進んでいます。
コロナ禍で病院・クリニックに来院する患者数が減少する中、いま一度患者様にご来院いただくためには、「安心・安全な診療体制」を構築する必要があります。そのため、多くの病院・クリニックでは患者様に安心してご来院いただくために、「感染防止策」を行っています。
しかしながら、このようなクリニックの感染防止策は、患者様に正しい情報として届かなければ意味がありません。例えば、患者様から「通院して危険はないか」「オンライン診療に対応しているか」「特定健診は受け入れてくれるか」といった電話が多くかかっては、受付はその対応に追われてしまいます。クリニックが保有する情報と、患者様が知り得る情報の差、そして感染の恐怖が「とりあえず電話」というかたちで表出しているのでしょう。この電話を減らすためにも、ホームページやSNSの活用は有効であると考えます。
急速に進むIT化
病院・クリニックのホームページは、コロナ禍でとても重要なプロモーションツールとなっています。ホームページが患者様の受療行動に影響するレベルは、ビフォアコロナと比べてはるかに大きくなっています。新型コロナが蔓延する前から、インターネットやスマホの普及により、その傾向は始まっていたのですが、このコロナ禍で一気に加速したと言えるのではないでしょうか。マイクロソフトのサティア・ナデラCEOは、「(コロナ禍)で2年分のデジタル変革が2カ月で起きた」と述べています。私たちが感じている以上に、IT化の波が急激に押し寄せているのです。
「密」を避けることができると分かれば、患者様は受診しやすい
例えば、ホームページに「待ち時間」や「待ち人数」など、現在の混雑状況を載せてみてはいかがでしょうか。密を避けたい患者様にとって、今すぐ行けば混雑を避けられると自宅や外出先から分かれば、受診はしやすいでしょう。これを行うためには、診療予約システムや順番管理システムの導入が必要となります。ホームページの充実の一環として、また患者様への安心・安全のPR方法として、検討してはいかがでしょうか。
クラウド時代の到来
一方、医療におけるIT化は、2010年を境に大きく変化を迎えました。それは医療分野の「クラウド解禁」です。2010年の医療分野のクラウド解禁以来、医療の現場でもクラウドサービスが増加傾向にあります。診療予約システムや電子カルテ、健診システムなど様々なクラウドサービスが出てきています。
医療機関はクラウドに対してどんな期待を持っているのでしょうか。たとえば、「導入コストの低下」や「システムの持ち出し」「デバイスフリー」「障害・災害対策」、「多職種間連携、地域連携」などが挙げられます。
Withコロナの時代、病院・クリニックは3密対策を行いながら診察を続ける必要があり、それでも患者数は思うように戻らないという厳しい時代を生き抜く必要があります。病院・クリニックにとって、患者増が見込めないいま、コストの見直しを真剣に行いスリムな経営を実践する必要があるのです。
サブスクリプションとは
クラウドとともに「サブスクリプション」という言葉をよく耳にするようになりました。サブスクリプションとは、定額制サービスともいわれ、モノ・サービスを購入するのではなく、一定の料金を支払うことで、一定期間のモノ・サービスが利用できる権利を得ることを意味しています。本来、サブスクリプションの英語の意味は、予約購読や予約代金、会費などを指し、そこから派生して現在のような意味として使用されるようになりました。
いま、モノを所有する時代から、モノを利用する時代に変わりつつあり、今回のコロナ禍がそれをさらに進めるのではないかと考えます。
医療のサブスクリプション
この波は、医療システムの世界にも及んでいます。医療システムは1970年代のレセプトコンピュータ(レセコン)に始まり、1980年代にオーダーエントリーシステム、2000年代に電子カルテシステムと進化を続けています。2020年現在では、クラウド型システムが主流になりつつあり、料金形態もこの「サブスクリプション」がほとんどとなっています。
システムはパソコンで動くシステムですから、OSに依存するため、OSのバージョンアップに合わせてシステムを買い替えるのが一般的でした。5年~7年周期でシステムの入れ替えが当たり前のように行われてきました。これらを「買い替えコスト」と呼び、甘んじて受け入れてきたのです。
しかしながら、その仕組みがサブスクリプションになることで、数年ごとにシステムを買い替える仕組みから、継続利用を前提とした、定額の仕組みに変わりつつあります。このサブスクリプションの考え方は、様々な医療情報システムに取り入れられており、今後はさらに範囲を広げていく可能性があります。病院・クリニックに必要なシステムのほとんどがサブスクリプションに移行する時代が来ているのです。
※続きの記事「病院・クリニックのためのコロナ禍の経営/クラウド戦略(3)」はこちらからお読みいただけます。ぜひ続けてお読みください。
執筆者プロフィール
MICTコンサルティング株式会社 代表取締役 大西 大輔 氏
2001年一橋大学大学院MBAコース修了。同年医療系コンサルティングファーム「日本経営グループ」入社。02年医療IT総合展示場「メディプラザ」設立(~2016閉館)。16年コンサルタントとして独立し「MICTコンサルティング」を設立、現代表。19年一般社団法人リンクア(医療・介護教育)を設立、現理事。
過去3000件を超える医療機関へのシステム導入の実績に基づき、診療所・病院・医療IT企業のコンサルティングおよび講演活動、執筆活動を行っている。