病院・クリニックのためのコロナ禍の経営/クラウド戦略(4)

※本記事は、下記記事の続きです。ぜひ併せてお読みください。
病院・クリニックのためのコロナ禍の経営/クラウド戦略(1)
病院・クリニックのためのコロナ禍の経営/クラウド戦略(2)
病院・クリニックのためのコロナ禍の経営/クラウド戦略(3)



 コロナ禍の病院・クリニック運営では、「感染症対策」と「生産性向上」の両立が重要です。感染症対策に有効なシステムと生産性向上に有効なシステムについて、機能と効果を説明します。

コロナ禍でICT化を進める際、重要な目的は「感染症対策」と「生産性向上」の両立です。この2つの目的は、一見相反する内容に感じますが、実は根っこは同じことです。いかに人の手を借りずに、人との接触を減らして、病院・クリニックのオペレーションを効率化するかは、コロナ禍の病院・クリニック運営において重要です。

ICTを活用した感染症対策

 病院・クリニックの「感染症対策」とは、院内で患者同士、患者と医療従事者、医療従事者同士で発生する問題です。病院・クリニックの待合室はどうしても「密」になりやすいので、その対策がコロナ禍では重要になります。最近ではICTを活用して密を回避する方法に注目されています。

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予約システムで「密集」を回避

 まず、密の発生する原因で最初に思いつくのが、待合室での混雑です。混雑した待合室は密になるだけでなく、患者が来院しにくい環境を作り出しており、せっかく来院しても密なので次の機会にしようと、機会損失を生み出しています。そこで、予約システムの導入に注目が集まっています。予約システムは、時間で管理する「時間予約システム」と順番で管理する「順番管理システム」に分かれます。

 最近では、時間と順番を組み合わせた時間帯(大まかな時間の目安)で管理する「時間帯予約システム」もあります。予約システムを導入することで、患者は来院前に混雑状況を確認することができます。また、自分の時間や順番が近づいてから来院するので、待合室での滞在時間の短縮、密の回避につながります。予約システムは時間による患者同士の距離(タイムディスタンス)を確保できるのです。

Web問診で「トリアージ」

 また、これから寒くなるにつれて、インフルエンザとCOVID-19の患者が同時に流行する可能性があり、発熱等を訴える患者が増えてくることが予想されています。そんな際に、発熱患者と通常の患者を分けるために有効なのが、「Web問診」の導入です。Web問診とは、従来の紙の問診表をデジタル化し、患者自らのスマホなどから入力を可能にしたシステムです。

 入力場所は、自宅などの外部からでも、待合室でも可能です。事前に自宅等で問診を入力してから、来院する流れであれば、事前に発熱があるかないかがわかりますので、発熱患者をトリアージすることが可能なのです。

オンライン診療で「密接」回避

 4月より初診からオンライン診療を行えるようになりました。現在はコロナ禍だけの限定的な規制緩和ですが、将来的には恒常的に規制を緩和できるよう議論されています。今後のCOVID-19の再拡大、インフルエンザとの同時流行などの状況を考えると、再び来院を控えたいと考える患者が増えてくるかもしれません。そのような時に外来を補完するために、オンライン診療を活用することで、患者の継続的な受診が可能になります。

 オンライン診療と先に挙げた予約システム、Web問診と組み合わせることで、感染拡大時の受診機会の確保につながります。オンライン診療があることで、患者は安心して受診継続が可能となるのです。

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ICTを活用した生産性向上

一方、病院・クリニックの「生産性向上」は、ICTなどを活用して自動化やタスクシフティングを進め、効率的な病院・クリニック運営を行う試みです。

自動精算機・セルフレジで「精算業務」を自動化

 クリニックでも「自動精算機・セルフレジ」の導入が検討されるようになりました。自動精算機等は、患者自らが精算業務を行うもので、最近ではコンビニやスーパー、ホテルなど様々な場所で見かけるようになりました。もともとは大規模な病院で導入が進んでいましたが、安価でコンパクトなクリニック向けの製品が出てきており、クリニックでも導入が進みつつあるのです。従来のようにレジを人間が入力するスタイルでは、「レジの入力間違え」や「釣銭の渡し間違い」が発生し、「レジが合わない」などの問題が発生していました。

 自動精算機等を導入することで、レジの間違いが減少し、業務が効率化され、生産性が向上すると注目されています。スタッフがお金を扱わなくなり、患者との接触も減ることから、感染症対策の一環としても導入が進んでいます。今後のキャッシュレスの流れとともに、導入拡大が予想されます。

クラウド健診で「健診業務」を効率化

 COVID-19の影響で健診が延期されており、健診の大幅な減少が報道されています。医療機関での感染リスクを考え、健診を受診しないままにすると、病気の早期発見、早期治療が困難になります。その結果、病気が重症化するのを防ぐため、速やかに健診を受診するよう各団体から呼びかけが行われています。健診業務は、従来では健診結果を紙に記載したり、ワードやエクセルに入力するなど、なかなか手間のかかる作業でした。そのため、「健診業務は面倒」と考える病院・クリニックも多かったのではないでしょうか。

 これから増えていくことが予想される健診業務を、効率的に処理するためには、安価で導入できる「クラウド健診システム」が有効です。簡単な操作で、きれいな健診報告書を作成することが可能で、生産性向上に大きく寄与します。しかも、クラウドタイプのものは、定額制(サブスクリプションモデル)ですから、安価に導入することが可能です。

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※続きの記事「病院・クリニックのためのコロナ禍の経営/クラウド戦略(5)」はこちらからお読みいただけます。ぜひ続けてお読みください。

病院・クリニックのためのコロナ禍の経営/クラウド戦略(5)

執筆者プロフィール

MICTコンサルティング株式会社 代表取締役 大西 大輔 氏

2001年一橋大学大学院MBAコース修了。同年医療系コンサルティングファーム「日本経営グループ」入社。02年医療IT総合展示場「メディプラザ」設立(~2016閉館)。16年コンサルタントとして独立し「MICTコンサルティング」を設立、現代表。19年一般社団法人リンクア(医療・介護教育)を設立、現理事。
過去3000件を超える医療機関へのシステム導入の実績に基づき、診療所・病院・医療IT企業のコンサルティングおよび講演活動、執筆活動を行っている。

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