医療IT最前線 第48回 待ち時間が増加するメカニズムとは?
今回は「待ち時間」について考えてみます。
待ち時間のメカニズム
患者が集中する時間帯は、一般的に(1)朝の受付開始直後、(2)昼休み前後、そして(3)診察終了間際の3つの山があります。集中して来院する心理は、患者の立場で考えれば明らかです。体調が悪ければ「できるだけ早く診てほしい」と考え、朝一番で診療所に訪れます。一方、会社員などは「お昼の休憩時間か、勤務時間終了後しか診療所に行けない」と考えることから、その時間でなるべく早く診てもらおうとします。
患者集中時期の告知が待ち時間対策に有効
例えば、「順番予約システム」を導入し、院外からWebサイトを経由して「混雑状況」を確認する方法があります。このシステムを導入すると、診療所に行ったり、電話で問い合わせたりしなくても、患者自身が混雑状況を把握できるようになります。来院する前に予約や待ち状況を確認することで、自然と混雑を避けるような行動が促されるのです。 実際、患者問い合わせが多い診療所は、その応対に時間がとられ、その行動が待ち時間につながることもあります。
業務オペレーションの改善が待ち時間対策に有効
オペレーションがうまくいっている場合と、そうでない場合で大きく差が開く部分でもあります。では、どう解決すればよいのでしょうか。
まず、現在のオペレーションを見直すことからはじめましょう。現在のオペレーションの中でロスになっている部分はないでしょうか。受付であれば「受付からカルテが準備されるまでの時間」、診察室であれば「診察時間」や「カルテ作成時間」、会計であれば「診察終了後から会計するまでの時間」などと分けて考える必要があります。 これらの時間を短縮する方法として、今回は「診察時間」に注目してみましょう。
診察時間のロスの原因は、患者の話や医師の診察が長いことも理由の1つですが、これを改善するのは簡単ではありません。診察自体を短縮すると、患者の不満につながってしまうからです。そこで、「いかに限られた時間に多くの患者を診ることができるか」という患者の回転率に着目してみましょう。
例えば、医師が1人で2つの診察室を利用する体制にして、医師と看護師が交互に患者を診る方法が考えられます。初診患者の場合、看護師が問診表に基づき予診を行い、その間に医師は別の患者を診る。こうすることで、同時に2人の患者を診ることが可能になります。診察室を2つ設けるスペースがない場合は、処置室を活用していることが多いようです。
医師を高回転させるクラークの存在
医師は患者が少ない時は診察の間に余裕を持ってカルテを入力することができますが、その間隔が短くなるとカルテの入力時間が合間に収まらなくなります。 その結果、カルテを入力する時間がロスとして積み重なり、患者の待ち時間の増加につながることもあります。
しかし、医師が診察しながら指示を出し、医療クラークが電子カルテを入力すれば、診察後に入力の時間を取る必要がなくなり、スピーディーに診察が回るようになります。クラークは書類作成にも活用できますので、さらに効率が図れることでしょう。いかに医師から書類作成事務をクラークに移管するかが待ち時間対策になるのです。
(2018年07月18日)