2010年に医療分野でクラウドコンピューティング(以下、クラウド)が解禁されてから8年が経ちました。現在、最もクラウド化が進んだシステムは診療予約システムでしょう。

クラウドによる「価格低下」の恩恵

待ち時間の緩和や来院患者数の平準化を目的に、診療所での診療予約システムの導入はこれまでも進んでいましたが、クラウドが解禁されてからはほとんどの診療予約メーカーがクラウドへの対応を進め、価格の低下を招いたことにより普及が一気に進みました。これはクラウド化による「価格低下」の恩恵がもたらした効果と言えます。

最近では米国に倣って、診療予約システムや経営分析システムなど医院の業務改善・経営改善活動を支援するシステムを総称して、PMS(Practice Management System)と呼ぶことが増えてきましたが、このPMS分野はクラウドが前提となっており、さらに発展(種類の増加)が見込めることでしょう。

クラウドは利用の場所を問わない恩恵

次いで、普及が進んだのは在宅向け電子カルテです。在宅医療では、介護施設や居宅、車中でカルテを作成したいというニーズから、電子カルテを外に持ち出したいというニーズなどがあります。在宅で電子カルテを使うには、(1)モバイル端末にデータをコンバートするか、(2)ネットワークで直接サーバにアクセスするか、どちらかの方法をとります。後者はさらに、リモートで入る方法とクラウドのタイプがあります。そう考えると、この3種類の方法のうち、どれが最も効率的かと考えてアクセス方法を選択することになります。

現在は、クラウド型電子カルテの普及が急速に増えています。これはクラウドによる「利用場所を問わない」という恩恵がもたらしているのです。

電子カルテのクラウド化は進むのか

もうひとつクラウドの普及で期待されるのは、「外来電子カルテ」でしょう。こちらは正直あまり進んでいないのが現状です。クラウドタイプの無料あるいは低価格の電子カルテが出現し、一気に普及が進むのかと予想されましたが、価格低下に消費者である開業医はいまのところ高みの見物というスタンスをとっています。医療の現場で電子カルテのトラブルは即診療中止を意味します。先に挙げた、PMSが止まっても診療は止まらないし、在宅も紙カルテにいったん切り替えて後で入力すれば良いのです。まして、会計はその場で行われないことが多いため、電子カルテ停止のリスクは外来に比べて少ないといえるでしょう。

そう考えると、いまのところ外来でクラウドタイプの電子カルテが普及するには、安定性・安全性という部分にある程度の保証がなければ、進まないという考えが働くのでしょう。ましてや低価格の電子カルテは、ベンチャー企業が中心であったことも相まって、安定稼働の保証ないという想像が働くため、クラウドによる価格低下のインセンティブが働かなかったのかもしれません。

しかしながら、現在のシェアの多くを占めている大手電子カルテメーカーがクラウド化を進めるとなると話は別。時期はまだわかりませんが、今後、クラウドタイプの電子カルテを大手メーカーから発表されるかもしれません。いまのうち、どこのメーカーがその準備を始めているのか、チェックは必要です。電子カルテのクラウド化は遠い未来ではありません。

(2018年10月03日)