かかりつけ医の普及という言葉は、地域包括ケアシステムの基本条件として、厚生労働省は促進策を相次いで発表しています。いまではかりつけ薬局という言葉も前回の改定で出てきました。これらは英国のGPという制度を参考に考えられているのですが、果たして日本に定着するのでしょうか。ただし、患者さんは馴染みの診療所に行くという行為は、かかりつけ医と考え方がなくても昔から存在しています。

馴染みの診療所はどのように生まれるか

さて、馴染みの診療所とはどのようなプロセスで生まれるのでしょうか。診療所に行く理由は多々ありますが、基本は体の不調が出現してから行動に移します。そのタイミングが、自宅であれば近所の診療所に行くでしょうし、職場で不調が起これば、職場近くの診療所に行くでしょう。

患者さんは「距離が近い」ことを、診療所の選択理由の最初に位置付けているのです。

また、近所の診療所はどのように探すのでしょうか。スマホで検索するのが一般的です。例えば、「神田 内科」といったように。検索サイトに表示された順番にひとつひとつホームページを見ていき、「距離」や「雰囲気」「予約の有無」などから、絞り込んでいきます。そして、お目当ての診療所が見つかれば、直接来院するか、予約して来院することになるでしょう。ここで重要になるのが「待たずに受診ができそうか」という問題です。

「待ち時間」は診療所選択の重要な決定要素

そして、実際に受診してみての「満足感」が伴えば、そのまま馴染みの診療所に選ばれるという流れです。この満足感には、「待ち時間」「スタッフの対応」「医師の対応」「設備」「清潔感」など様々なチェックを行って、意思決定をしていきます。特に風邪やインフルエンザ、花粉症といった季節病の場合は、「待ち時間」が大きな決定要素となるでしょう。

また、患者さん自らが慢性的に不調を訴えるなど、継続的な病や病名が分からない病の場合は、「医師の対応」が重要な決定要素になります。また、大病院の紹介状なしの定額負担化を厚労省は進めており、この影響から紹介実績や紹介状の作成スピードなどもこれからますます重要になってくるでしょう。

遠隔診療は患者さんの診療所の選択の意思決定プロセスに変化をもたらす

そう考えると、今回の改定で注目されている「遠隔診療の評価」は、患者さんの流れを変えていくかもしれません。遠隔診療はオンライン診療とも呼ばれ、ビデオチャットなどで簡易に診察を行う仕組みですが、患者さんにとっては非常に便利な仕組みであるため、定期的に来院が必要な方や、待たずに受診したい方、何らかの理由で来院が難しい方などを中心に普及が進んでいくことが予想されます。また、カード決済や処方せんの郵送といった新しい動きも同時に発生します。

さらに「遠隔診療の普及」はその先にある、PHR(Personal Healthcare Record)やデータヘルス、処方せんの電子化などとも密接に絡んでいます。遠隔診療は患者さんの流れを大きく変える可能性があるのです。将来は、患者さんの馴染みの診療所の選択理由に、「遠隔診療」「カード決済」「処方薬の配達」などが加わってくることが予想されます。

(2018年10月24日)