医療IT最前線 第63回 AIやロボットが普及すると医療事務はなくなるのか
生産性向上を目指してAIやロボットの普及
現在、日本は少子超高齢社会を迎えています。その結果、生産人口が減少する中、どのように労働力の確保を図るかが重要命題となっています。
一方、政府が進める働き方改革では、先進国で最も低いと言われる我が国の「生産性向上」を目指して、AIやロボットの推進を後押ししています。
医療事務はなくなる仕事?
そのような中、AIやロボットの普及が進むことで、10年~20年後にはさまざまな職種がなくなるといわれています。
野村総合研究所が発表した「人工知能やロボット等による代替可能性が高い100種の職業」の中で、医療事務員が挙げられています。代替可能性の高い理由としては、「必ずしも特別の知識・スキルが求められない職業に加え、データの分析や秩序的・体系的操作が求められる職業については、人工知能等で代替できる可能性が高い傾向が確認できた」としています。
すでに医療事務の業務内容は自動化されつつある
大病院ではほとんど電子カルテの導入が進みました。残った診療所・中小病院での普及は時間の問題でしょう。
電子カルテが普及することで、医療事務のメイン業務であった「カルテを解読しレセコンに入力する(レセプト入力)」業務はなくなりつつあります。さらには、自動受付機が普及したり、保険証にICチップが埋め込まれたりすれば、受付や保険証を登録する仕事もなくなります。今後、自動精算機の普及で、会計業務もなくなっていくことでしょう。
レセプト点検業務ですら、支払基金が2020年よりコンピュータチェックの割合を高め、AIを導入することを発表しています。その後、チェックシステム自体も全国の医療機関に公開するとしていますから、いずれは医療機関側もコンピュータチェックの導入が進んでいくことでしょう。
受付、レセプト入力、会計、レセプトチェックという医療事務業務が、急速にシステムにとって代わられてきているのです。医療事務という仕事は、このまま現在のスキル・経験に則り、新たな業務にチャレンジしなければ、徐々に業務範囲は縮まっていき、いずれはなくなってしまう可能性は大いにあると思われます。
(2019年3月25日)