医療分野のクラウドサービス解禁で新たな流れ

2010年に厚生労働省が通知した「診療録等の保存を行う場所について」の改正で、カルテや検査画像などの電子媒体を企業が運用するサーバで管理することが認められ、医療分野でのクラウドサービス利用が実質解禁となりました。それ以降に出た厚生労働省の政策では、明らかにこれまでとは異なる政策的意図に基づいています。

診療情報提供書等の電子的な送受に関する評価(2016年)

従来、診療情報提供書や訪問看護指示書、服薬情報提供書などは、紙へのプリントアウトに加えて署名と押印が必要でした。2016年度の診療報酬改定で、電子的に署名し、安全性を確保した上で電子的に送受信した場合も、診療報酬点数の算定が可能になりました。

検査・画像情報提供加算、電子的診療情報評価料の新設(2016年)

2016年度の診療報酬改定では、診療情報提供書に添付する検査データや画像データを、地域連携ネットワークで電子的にやりとりする行為を評価する点数が新設されました。地域連携ネットワークを通して、先行的に診療情報提供書(いわゆる紹介状)、検査、画像をやりとりしている地域が評価されたことになります。

電子処方箋の運用ガイドライン(2016年)

現在、国家戦略特区などで試験的に運用している電子処方箋について、今後の普及を見込んで2016年に運用ガイドラインが整備されました。電子処方箋が普及することで、オンライン診療やオンライン服薬指導を併用できるようになり、患者の利便性が飛躍的に向上することが予想されます。処方薬をWebサイトで購入できる時代が近づいています。

これらの政策は、2025年の完成を目指している「地域包括ケアシステム」に向けた取り組みだと考えることができます。クラウド技術を活用して、診療情報提供書などの書類や検査結果、画像データ、処方箋を共有できる環境整備が進んでいます。

医療ITから医療ICTへ政策変更がされたと考えられます。

このような流れを見ると、政府は医療ITを推進する上で、前半に医療情報のデジタル化(IT化)を進め、後半にその情報を安全なネットワークを通じてクラウド環境に共有する(ICT化)、という2段階の絵を描いているのではないかと考えられます。

クラウド技術は院内システムでも活用が進んでいます。いよいよクラウド型電子カルテが普及段階になりつつある、と感じています。

(2019年5月29日)