医療IT最前線 第76回 医療分野における生産性向上のためのRPAの可能性
生産性向上の手段として、RPAに注目
少子高齢化が進む我が国において、労働人口の減少が大きな問題となっています。
そのため、労働力の有効活用や生産性を向上させるための方策が議論されており、従来よりも少ない人数で生産力を高めるための手段として、現在、RPA(Robotic Process Automation)が注目されています。
RPAとは、「これまで人間が行ってきた事務作業の一部を、ロボットを使って自動化する取り組み」です。ロボットというと、SF映画に出てくるようなアンドロイドのようなイメージがあるかもしれませんが、ここでいうロボットはそのような見た目ではありません。パソコン上で行われる仕組みのことで、概念としてのロボットという言葉になります。
RPAは3段階
総務省は、「RPAには3段階の自動化レベルがあり、現在のRPAの多くはクラス1というレベルで定型業務に対応している。次期レベルのクラス2は、AIと連携して非定型業務でも一部は自動化され、クラス3は、より高度なAIと連携することで、業務プロセスの分析や改善だけでなく意思決定までを自動化できる」と定義しています。
RPAはいまのところ、クラス1の普及が始まり、従来ホワイトカラーが行ってきた大量の事務作業を処理するのに適しているとされており、金融機関が先行して導入しています。
RPAを統計データ加工に活用?
医療の世界でRPAはどのような可能性を秘めているのでしょうか。
医療機関では定期的に経営に必要な統計データをエクセルなどを使用して算出しています。人間が行う場合の一般的な流れは、電子カルテからCSVでデータを抽出し、これをエクセルなど表計算ソフトで加工し、グラフなどで表示させるという作業です。この業務もRPAを使うことで、毎日自動的に欲しいデータのグラフを定型のフォーマットで作成することが可能になります。
また、電子カルテを導入するための要求仕様書(RFP)を作る際に、「自動的に統計データを算出できること」という項目が盛り込まれるようになり、RPAが今後導入されていく可能性があります。
レセプト点検、レセプト請求もRPAを活用できるのではないか?
将来的には、レセプト請求においても、RPAは活用できるのではないかと考えます。毎月レセプト時期になると、自動的にレセプトチェックを行い、問題点を修正し、正しいレセプトを作成し、それを決まった時期に請求するということが実現できるようになるのではないでしょうか。この作業にAIが加われば、過去のレセプトの返戻・査定状況を分析し、地域性や個別性を配慮した対応が可能になるかもしれません。
(2019年9月9日)