選定基準となる6つの要素

新型コロナウイルス感染症の感染拡大の影響から、4月に政府は全国に「緊急事態宣言」を発令し、外出自粛が要請されました。そんな渦中に、医療崩壊を防ぎ、受診困難な患者の受診機会を守るために、政府は時限的・特例的措置として「初診から電話及びオンラインによる診療」を行うことを認めました。
その後、5月末には全国で緊急事態宣言が解除されたものの、完全にコロナが収束したわけではなく、政府が提示した「新しい生活様式」を守りながら、徐々に経済活動を再開することとなりました。

関連リンク:新しい生活様式の実践例(厚労省)https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000121431_newlifestyle.html

オンライン診療は外来診療の補完的役割

従来、オンライン診療は、外来診療に比べて取得できる情報が限られているため、外来の補完的サービスとして位置付けられています。実際、算定するための制約も多く、点数も外来と比べて低く設定されてきました。また、オンライン診療では、検査も処置も手術もできず、実際の診療に比べると大きな制約があるため、利用は限定的と考えられてきたのです。
今回の時限的措置により、算定の制約のほとんどが一時的に解除され、オンライン診療の利用シーンが広がると、一気に脚光を浴びているのです。

電話・オンライン初診で変わること

これまで慢性患者の再診に限定されてきた電話及びオンラインによる診療が、4月10日の厚労省事務連絡により、初診から認められることとなりました。この通知を境に、オンライン診療は時限的とはいえ、「疾患」も「対面期間」もほとんど制限なく利用が可能になったのです。これが1つ目の変化です。
そして2つ目は、4月末には厚労省のホームページで、電話及びオンライン診療に対応する医療機関リストが公表されました。厚労省がこのようなリストをホームページで公開するのは異例のことです。このリストを頼りに、患者が電話やオンライン診療のできる医療機関を探すとなると、患者による医療機関選別が始まるきっかけになるのです。

関連リンク:新型コロナウイルス感染症の感染拡大を踏まえたオンライン診療について(医療機関リスト)(厚労省)https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/iryou/rinsyo/index_00014.html

設備投資には補助金の活用を

厚労省の医療機関リストを確認する限りでは、いまのところ設備投資なく、すぐに始められる電話診療が先行しています。コロナ禍で外来患者の大きな減少により医業収入が減少している状況では、オンライン診療への投資は抑えたいと考える医療機関も多いと思われます。オンライン診療に取り組む医療機関を増やすためには、設備投資に対する資金的サポートが必要です。
そこで、経済産業省の「IT導入補助金」の利用が一つの案として考えられます。5月22日に更新された内容では、「特例枠」として、最大450万円で補助率は3/4と従来の2/3から引き上げられています。
関連リンク:IT導入補助金2020(経産省)https://www.it-hojo.jp/

オンライン診療サービスの選び方

オンライン診療サービスを提供するメーカーは、この機が参入チャンスととらえて増加傾向にあり、現在、10社以上のメーカーがサービスを提供しています。今後もさらに参入企業が増えていくことが予想されます。そこで、数多くあるオンライン診療サービスの中から、適切なサービスを選ぶにはどうすれば良いか、考えてみることにします。選定基準において私は、(1)操作性、(2)機能、(3)導入件数、(4)コスト、(5)事業継続性、(6)連携の6つの要素があると考えます。

【操作性は患者の立場で確認する】

「操作性」については、医療機関側だけでなく患者側の確認が必要です。医療機関がせっかくオンライン診療サービスの準備をしても、患者が使いにくいと感じれば、当然ながら利用はされません。具体的な確認方法としては、患者の立場で、受診する際のアプリのダウンロード、個人情報や保険証、クレジットカードなどの情報の登録、予約、診療、会計という一連の流れを確認することをお勧めします。アプリが使いにくければ、利用は増えませんし、お問い合わせの電話が増えてしまいます。アプリは使い勝手に差が出やすいい所なのでしっかり確認する必要があります。

【機能は一連の流れをシミュレーションする】

「機能」については、オンライン診療サービスのほとんどは、予約、問診、受付、診察、会計といった機能を備えています。機能の違いを強いてあげるとすれば、問診入力やバイタル機器との連携などです。また、会計機能については、電子カルテやレセコンといった既存システムとのすみ分け、連携についても注意が必要です。機能を確認する際、実際の診察場面をイメージし、シミュレーションを行うと良いでしょう。

【コストは永遠に無料なのかどうか確認する】

「コスト」については、(1)無料で提供しているもの、(2)有料で提供しているもの、(3)患者の負担が必要なものなどに分けられます。まずは他の医療システムの選定と同様に、初期費用とランニングコストに分けて考えると良いでしょう。また、そもそも無料で提供しているオンライン診療サービスは、「メーカー側の収益の仕組み」に疑問も浮かびます。戦略的に拡大期は無料で配ることで大きくシェアを伸ばしたいと考える企業側の思惑は分かるものの、拡大期が終わった際にどう変わるかは、メーカーの姿勢をしっかり見極める必要があります。

【導入件数はサポートに連動するが、急激な増加は要注意】

「導入件数」については、多ければ多いほどサービスがこなれており、サポートもしっかりしていると言えるでしょう。ただし、急激に導入件数を伸ばしているメーカーには注意が必要です。メーカーが対応できる件数を超えてしまうと、導入にかかる時間が長くかかってしまうなど、サービスの低下を招く恐れがあるのです。現在のように需要増が予想される時期に、通常と同様の動きをしているメーカーに注目すると良いでしょう。

【事業が安定的に継続できる会社を選ぶ】

「事業継続性」とは、そのメーカーが将来的に事業を継続していける体力があるかという意味です。時代の流れに乗って参入した企業の中には、将来どのように収益を上げるのか心配なメーカーもあり、せっかく導入したサービスも、途中で終了してしまうことも考えられます。また、カスタマーサポートも期待できないなど、安心して使うことができない可能性もあるのです。医療機関向けのシステムは安定稼働が必須のため、事業を継続できて、初めて導入可能と判断すべきでしょう。

【電子カルテ、予約、服薬指導との連携・すみ分けを確認】

「連携」については、現在導入している業務システム(電子カルテ・予約システムなど)とどのように連携を図り、すみ分けを行うかを確認する必要があります。つまり、システム間の業務の重複ができるだけ少ない方が効率的だと考えます。また、薬局で導入が始まっている「オンライン服薬指導システム」との連携も、今後重要なポイントになります。患者にとっては診察から処方箋の発行、薬局での服薬指導、医薬品の送付といった一連の流れがスムーズな方が、当然利便性が高まるからです。

緊急事態宣言が解除されたとはいえ、いつ第二波がやってくるか分からない時期に、一度落ち込んだ外来患者数が一気に戻るとは考えにくい。そのような時期だからこそ、出費が伴うシステム導入は、できるだけ失敗したくないと考えるのが医療機関の本音でしょう。今回紹介した6つの要素を参考に選定を進めて欲しいと考えます。

(MICTコンサルティング株式会社 大西 大輔)