新型コロナの診療所経営への影響

新型コロナウイルスの感染拡大は、約2か月の外出自粛の甲斐あって、いったんは収束に向かい、5月末には全国で「緊急事態宣言」は解除されました。しかしながら、7月に入り連日多くの感染者が報告されており、再拡大という局面を迎えています。

当面は、Withコロナと呼ばれるように、新型コロナウイルス感染拡大の第2波、第3波に注意しながら、経済活動を進めるという状況がしばらく続きそうです。そのようなWithコロナの状況で、政府は「新しい生活様式」を守りながら、日々の生活を営むことを求めています。

「新しい生活様式」という変化

厚労省が5月4日に公表した「新しい生活様式の実践」によると、一人ひとりの基本的感染対策として、人との間隔をできるだけ2メートル空けることや、屋内よりも屋外で遊ぶこと、会話する際は正面を避けること、症状がなくてもマスクを着用すること、など様々な面で新しい生活様式を実践することが求められています。
日常生活を営む上での基本的生活様式では、手洗いや手指消毒、3密の回避(密集、密接、密閉)などが求められています。

新型コロナウイルスの影響は、生活そのものの在り方が変わったということが大きいと言えるでしょう。買い物や娯楽・スポーツ、交通機関、食事など、いま、生活のほとんどの部分で変化が必要になっています。

また、働き方改革も合わせて進んでおり、テレワークや時差通勤、オンライン会議、オンラインセミナーという、在宅で働く(ステイホーム)時代が来ていますので、仕事や職場についても変化が求められています。

そのような中で、医療機関もその変化に適応する必要が出てきています。

新しい受療行動

Withコロナの時代では、患者の「受療行動」にも大きな変化が見られます。1つは冬から春にかけて、インフルエンザや花粉症などの、季節系疾患がほとんど流行しなかったという現実です。各自が新型コロナウイルスの感染予防を徹底することで流行が抑えられ、また子供たちが学校に行かなかったことで移し合うことがなかったことも、大きく影響しています。この傾向は、秋から冬にかけても同様に見られると思われます。

一方で、医療機関でクラスターが発生するなどのニュースが、毎日のように飛び交ったことで、「医療機関での感染が怖い」という患者認識が進み、外来受診を控える動きが顕著になりました。 

そのような状況下で、4月10日に厚労省が「初診から電話・オンライン」での診療を可能にしたことで、電話やオンラインでの診療を希望する患者が増えています。また、できるだけ受診を控えたいと、長期処方を希望する患者も増えています。長期処方を希望する患者が増えれば、当然受診頻度が減り、外来患者数の減少につながります。

さらに、感染リスクに備えて手術が延期になったり、飛沫の飛ぶ検査や処置が減ったことも単価減につながったりと、様々なことが要因となって、医療機関に大きな収益減をもたらしています。

日本医師会調査、4月は小児科・耳鼻科で3割以上ダウン

日本医師会の調査「新型コロナウイルス感染症対応での医業経営状況等アンケート」によると、4月は前年同月に比べて、全体で入院外総点数が1割以上減少し、特に小児科(39.2%減)や耳鼻咽喉科(36.6%減)では3割を超える減少が見られると報告されています。

感染者数の増加による医療機関の切迫を緩和することを目的に、4月に緊急事態宣言が発令され、外出自粛が要請される中、患者の「受診控え」が大きく進んだことが明らかになりました。

電話等初診、電話等再診の算定

4月の初診料の算定については、診療所は前年同月比で40.0%ダウンと大幅な減少が見られます。一方、4月10日から解禁された電話・オンラインでの初診については、開始間もないということもあり、実施医療機関は診療所で5.6%、算定回数割合は0.2%にとどまっています。

診療所の再診料の算定については、4月が前年同月比で14.0%減少しています。電話・オンラインでの再診に関しては、4月は前年同月比で530.7%アップと大きく増えています。割合としては、全ての再診料に対する電話やオンラインの再診割合は、1.69%にとどまっています。

初診から電話・オンラインでの診療が始まり、大変注目が集まりましたが、実際のところは、その影響が出るのはもう少し先であると考えます。今回の急激な制度変化に対して、医療現場が追い付いていない現状が垣間見えます。

診療所は3密対策をしっかり行い告知する

コロナ禍で「外来数の大幅減少」という、過去に例のない影響を受けている診療所は、いまどのような対策を行う必要があるのでしょうか。

真っ先に取り組むべきは「3密対策」ではないでしょうか。診療所を安心、安全な場所と患者に認識させることが必要です。

当然、3密対策は多くの診療所で行われていますが、ここで重要なのは患者にホームページやSNS(LINE、Facebookなど)を通して、しっかりと告知を行うことです。いくら対策を行っても告知が不十分では、患者は行動に移さないのです。

SNSの活用が本格化

例えば、患者から「通院して危険はないか?」「オンライン診療に対応しているか?」といった電話が多くかかってくると、受付はその対応に追われてしまいます。診療所と患者が知り得る情報の差、そして感染の恐怖が「とりあえず電話する」というかたちになって、表出すると考えられます。
そこで、クリニックの患者に向けた広報活動として、ホームページだけではなく、SNSの活用を考えてはいかがでしょうか。

ホームページとSNSを組み合わせる

ホームページは、ユーザーに一方的な情報を提供するメディアであり、サイトに訪問しなければ情報を得ることはできません。一方、SNSは、誰もが気軽に情報を発信できる「双方向」メディアです。投稿側・閲覧側という垣根が極めて小さい点が特徴です。そして近年では、検索エンジンよりもSNS内の検索機能で情報収集を行うケースも増えてきています。この傾向は、コロナ禍でさらに進んでいると考えられます。

そこで、SNSとホームページを連携させることが重要になっています。ホームページは検索エンジンからのユーザー閲覧を待つ「プル型メディア」であるのに対し、SNSはフォロワー(登録者)に対し、好きなタイミングで情報発信することができる「プッシュ型メディア」です。この両者の特性を活かすことで、マーケティング(告知)効果を最大化しようとする戦略です。

Withコロナの時代では、情報をインターネットから得る患者層が増えており、今後、診療所の主流なマーケティング手法として、定着していくことが予想されます。以下に、国内で普及しているSNSの年齢層と特徴をまとめました。情報を届けたい患者の年齢層や性別などを考えながら、有効に活用していただければと思います。

(MICTコンサルティング株式会社 大西 大輔)

※続きの記事「3密対策とICT化(2)」はこちらからお読みいただけます。ぜひ続けてお読みください。
https://carnas.njc.co.jp/ganmoku/a-057/