3密対策とICT化(2)

※本記事は、下記記事の続きです。ぜひ併せてお読みください。

3密対策とICT化(1) https://carnas.njc.co.jp/ganmoku/a-056/

受付・待合室をどう改善するか

診療所の受付、待合室の現状

診療所の受付では、狭い空間に複数のスタッフがおり、スタッフ同士の距離が近いという問題があります。
これは「密閉」にあたります。また、待合室では、患者の滞在時間が比較的長い傾向にあり、患者の数も多ければ、それだけ密になります。これは「密集」にあたります。

さらに、患者と医療スタッフは、受付時や会計時にどうしても至近距離で接する必要があります。これは「密接」にあたります。このように診療所の受付や待合室は、3密になりやすい傾向にあるのです。早急にこの改善に取り組む必要があります。

「密閉空間」対策

診療所が「密閉空間」での業務を減らすことは、スタッフ同士の間隔をとることへの対策となります。

まずは、勤務状況から考えてみましょう。通常、多くの診療所では同じ時間に全員が出勤して、同じ時間に全員が帰るというスタイルをとっています。この仕組みを見直し、「時間差出勤」や「シフト制」、「時短業務」というスタイルに変えることで、時間当たりの人数を減らすことが可能です。コロナ禍で、患者が少ない時こそ、大胆な変化が可能ではないかと考えます。

また、スタッフの業務を分散させることも、密閉対策につながります。具体的な対策として2つご紹介します。

端末を増やして業務を分散する

1つは、ポジションごと、部屋ごとに、できるだけ1人の配置にすることです。

そのためにはパソコンの台数がどうしても足りません。そこで、電子カルテメーカーと相談の上、1人1台のパソコンを置けないか検討します。最近、クラウドの電子カルテが増えてきており、比較的端末当たりのコストが下がってきていますので、コストは抑えることができるのではないかと考えます。

電子カルテの端末を増やすことで、スタッフ同士の距離を確保できるだけでなく、同時並行で複数の業務が行われるようになることから、スピードアップにつながります。運用によっては、端末を増やした結果、患者の滞在時間が短縮できます。

レセプトチェック業務を効率化する

2つ目の対策です。診療所では、電子カルテ・レセコンのいずれも、レセプト点検業務は必要です。

従来通り、レセプトを紙に印刷して、みんなでレセプト点検を行うと、密が発生しやすい状況が生まれます。そこで、「レセプトチェックシステム」を導入して、1次チェックをシステムに任せると、実際にチェックするのは3分の1に減らすことが可能です。チェックするレセプトを減らすことによって、時間と人を減らす効果が期待できます。密閉空間での作業はなるべく行いわないようにすることも、「スタッフを守る」ためには必要になります。

「密集場所」対策

どうすれば待合室の密集を減らすことができるのでしょうか。

現在、多くの診療所で患者同士のソーシャルディスタンスを確保するために、待合室の席数を減らしたり、車の中で待ってもらったりと、工夫をされています。しかしながら、それにも限界はありますので、根本的な対策が必要です。

そこで、「距離」ではなく「時間」に注目した対策をご提案します。従来、診療所では患者は「いつでも来る」という運用をしています。診療時間内であれば、何時に来てもいいのです。このため、朝一番や診察終了間際に患者が集中し、密が発生してしまうのです。

そこで、「決まった時間に来る」というオペレーションに変革してはどうでしょうか。患者が決まった時間に来ることで、患者の集中は減り、また待合室で待つ時間も減っていくのです。

予約システムでタイムディスタンスを確保

時間による距離(タイムディスタンス)をとるためには、「予約システム」の導入が有効です。

予約システムは、「時間による予約」と「順番による予約」の2つのタイプがあります。時間は、9時、9時10分、9時20分と時間を予約する方法で、順番は1番、2番、3番、と番号を発券して、それをとっていく方法です。待合室が密集する原因は、待合室での待ち時間にあります。いつ呼ばれるかわからないまま、多くの患者が待っています。

そこで、予約システムを導入して、自分の順番が来てから来院する仕組みにしてはどうでしょうか。自分の番が近づくまでは、自宅など診療所の外で待つことが可能です。こうすることで、待合室での滞在時間は劇的に減っていきます。

例えば、自分が20番であればその5番前に来院することで、移動も考慮すると待ち時間がほとんどなく診療を受けることが可能になるのです。これで、時間による距離の確保ができると思われます。

Web問診でトリアージ

診察の前には、初診であれば「問診」の記入が必要です。

この問診業務も待合室で行っていては、密の原因になりかねません。そこで、最近増えてきているのが「Web問診」の導入です。事前にホームページからWebで問診をとることで、来院したときにはそのまま診察に入ることが可能です。先に紹介した予約システムと組み合わせて使うと、待合室での滞在時間がさらに短縮できます。

さらに、コロナ禍で新たにトリアージとしての利用が増えています。院内での感染リスクを考えると、新型コロナウイルスに感染している可能性のある患者が、待合室に長く滞在するのは、感染リスクを伴います。そこで、事前に問診をとることができれば、診療所の外で対応することが可能です。

感染疑いの患者は、電話やオンラインでまずは症状を確認する、車で診察を行う(ドライブスルー診察)など、事前に問診を行うことはトリアージになるのです。一番最初に出会う受付スタッフと患者の接触を減らすことで、スタッフを守り、診療所を守ることにつながります。

「密接場面」対策

さて、どうすれば患者とスタッフとの接触を減らすことができるのでしょうか。

今、注目されているのが「オンライン診療」です。電話やオンライン診療による「非接触」を作り出すとともに、患者の「利便性」の向上を図ることが可能です。

オンライン診療はITによるハードルを下げる必要がある

オンライン診療システムの導入成功のカギは、いかに多くの患者に利用してもらうかです。

多くの患者に使ってもらわなければ、せっかくお金をかけて導入したものがムダになってしまいます。オンライン診療は、しっかりと患者に告知をしなければ利用は進みません。ホームページやSNSを利用して患者に情報を届けるとともに、来院時にもパンフレットなどを利用して説明を行ってください。

また、オンライン診療をスムーズに患者に利用してもらうためには、ITによるハードルを下げる工夫が必要です。患者が利用する際に必要な事前準備を説明するとともに、来院時にお手伝いをするなど、できるだけハードルを下げる必要があるのです。

ウィズコロナの時代では、オンラインと外来を上手に使い分ける

オンライン診療は、今後の「新型コロナウイルスの第2波への備え」と考える必要があります。感染が再び拡大して、いつ外出自粛要請が出されるかわかりません。患者が来院しにくい状況が出て来るかもしれません。そういうときのために、準備を進めておくことは有用だと考えます。

ウィズコロナの時代では、オンラインと外来の特徴をしっかり把握して、上手に使い分けることが大切です。オンラインが得意なのは、患者からの事前相談や、コロナ禍での継続的な治療です。

一方で、検査や処置、手術はできませんので、オンラインはあくまで外来の補完に過ぎません。コロナのせいで患者との関係が薄まらないように、患者のハートをつなぎとめるツールと考えれば良いのではないでしょうか。オンライン診療は外来受診の必要性を説き、外来受診へ誘導するツールと考えるべきなのです。

(MICTコンサルティング株式会社 大西 大輔)

 

※続きの記事「3密対策とICT化(3)」はこちらからお読みいただけます。ぜひ続けてお読みください。
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