急性期1からの撤退は約25% 急性期4~7の約5割がランクダウンか?

1月31日に厚生労働省の中医協(中央社会保険医療協議会)より2020年度診療報酬改定の個別改定項目(「短冊」)が公表された。診療報酬点数や個別項目の要件、施設基準の一部は未だ明らかになっていないが、2月中旬までには全て公表される見通しだ。

筆者が本稿を執筆しているのは、その直前の2月4日の段階。今後、全ての内容が示されてからテーマ別に解説したいと考えているが、今回と次回に関しては特定の範疇に絞るのではなく、2020年度改定で特に注目される新機軸を横断的にピックアップし、アトランダムに医療現場における影響等も踏まえて紹介したい。2020年度改定の基本的考え方や方向性、改定率等のマクロ的な動向には敢えて触れない。厚生労働省のホームページや、専門家等による各媒体の解説等を読むと、それら、紋切型の言及は至るところに溢れているからだ。

ただ、最初に読者の皆様の関心が高い急性期一般入院料については、若干、触れさせて頂く。2020年度診療報酬改定は他の類型も同様だが、2018年度診療報酬改定で大きな再編・統合が実施された入院料の区分については大きな見直しはなかった。急性期一般入院料は現行通り7区分だし、地域包括ケア病棟も「実績」評価のある入院料1・3と、それがない2・4の4区分。回復期リハビリテーション病棟も実績指数の求められる入院料1・3・5と、それがない入院料2・4・6の6区分であるのは、2020年度改定ではそのままだ。報酬点数については未だ分からないが、大きな見直しはなさそうだ。ただ、いずれの病棟区分においても施設基準や要件等については多くの改正が行われた。

そして、急性期一般入院料(以下、入院料)届出病院で病院経営に最も大きな影響を与える改正ポイントは、「重症度、医療・看護必要度」(以下、看護必要度)の見直しだ。

特に2018年度診療報酬改定で新設定の「B項目のうち「B14診療・療養上の指示が通じる」又は「B15危険行動」に該当する患者であって、A項目1点以上、B項目3点以上」の基準が、すっぽりと削除されてしまった。そして、許可病床「400床以上」病院はDPCのEFファイルを活用した看護必要度IIの採用が原則化された。厚生労働省は2018年度診療報酬改定から入院料2・3に限定して、看護必要度IIの採用を義務付けたが、看護必要度IIの採用が予想していた程に進まなかったことから、入院料2及び3も看護必要度Iを用いた場合でも届出が可能なように改めた。

現状では入院料1から7までの看護必要度I・IIの患者割合(%)がどうなるのかはまだ分からないが2018年1月時点で従来の「7対1」届出病棟の約96%の病棟が、「入院料1」を届出しており、退出が進まなかった。厚生労働省は「7対1」と同等の入院料1から入院料2・3等への移行を更に進めるべく、今後、政策誘導を強めていくのは間違いない。

そのための一里塚と言えるのが、前出の「A項目1点以上、B項目3点以上」基準の削除だ。「療養上の指示が通じる」、「危険行動」等の高齢で、認知症等を抱えた患者は、現状の急性期一般入院料届出病院にも、数多く入院していると想定されるからだ。そして「看護補助者でも対応可能」な行為である当該B項目については、2020年度診療報酬改定での再編が予定されている「認知症ケア加算」の評価に移行する。一方、「看護職員が主に対応する」行為であるC項目については、入院実施割合が9割以上の開頭手術、骨手術等に限定し、評価期間を約2倍にした(図表1)。

ここでは触れなかった改正点も含めて、急性期一般入院料を届出する病棟は「救急」と「手術」に特化した病院として今後、扱われ、診療報酬でも重点評価される流れが鮮明となった。逆に現状、慢性期や認知症の入院患者の割合が高く、手術・救急件数の少ない病棟は、急性期病棟として維持するのが困難になる。

急性期医療現場に精通した某病院事務長は2020年度診療報酬改定の結果から、「入院料1算定病棟の約25%は、脱落せざるを得ない。特に厳しいのはA項目1点以上・B項目3点以上の入院患者割合が高い入院4~7算定病棟で、ランクダウンや急性期病棟からの撤退を余儀なくされるだろう」との厳しい見方をする。急性期一般入院料算定病院の約4分の1は「現在の敷居」が高くなると言うのだ。

オンライン服薬指導・食事指導の新設 加え「遠隔禁煙外来」も解禁!

この後は、注目される改定項目をアトランダムに見ていくことにしよう。現職国会議員が逮捕される等、最近とかく世間を騒がせているIR推進法を巡るスキャンダル。2018年7月にIR推進法案を強行採決した政府は、その3か月後に「ギャンブル依存症対策基本法」を成立させた。それに呼応したかのように2020年度診療報酬改定で依存症集団療法の対象疾患に「薬物依存症」に加えて「ギャンブル依存症」が追加。わが国で初めてギャンブル依存症に係る診療報酬が新設された。

要件については「短冊」に掲載されているので省くが、中医協委員の中からは「ギャンブル依存症は自己責任であり、公的保険でカバーするのは国民の理解が得られない」との主旨の反対意見があったのも事実。導入は微妙だったが、厚生官僚が導入に“前のめり”で実現した。現政権は国民の大多数が反対するIR推進法案を強行採決したことから、国がギャンブル依存症対策に努力しているとの姿勢を示したいはず。厚生労働省が政府の意向を“忖度”したのか否かは軽々には言えないが、読者のご想像にお任せしたい。

ただ厚生労働省のデータ等によると、ギャンブル依存症患者は薬物依存症等と共に近年、増加傾向にあり、特にギャンブル依存症は過去4年間で約1.5倍に増加しているとの報告もある。実際に「ギャンブル依存症専門外来」等を開設する精神科系医療機関は増えており、マーケティング的には注目すべき領域と言えそうだ。

そして、オンライン(遠隔)診療に関して、2020年度診療報酬改定から栄養士の係る「外来食事指導料」で、初回は「対面」による栄養食事指導が必要だが、2回目以降については医師の指示の下にオンラインで栄養食事指導を実施した場合に、「月1回」に限定して報酬算定が可能になる。加え、既に予想されていた通り薬機法(医薬品医療機器等法)改正により解禁された保険薬局のオンライン服薬指導に係る報酬も新設された。2項目が新設され、1つは現行の「薬剤服用歴管理指導料」の「オンライン服薬指導を行った場合」の評価。「薬剤服用歴管理指導料」算定に係る業務をオンラインで行うのが前提で、月に1回に限り算定できる。

もう一つは、「在宅患者に対するオンライン服薬指導」の評価で、「在宅患者訪問薬剤管理指導料 在宅患者オンライン服薬指導料」というもの。いずれも「情報通信機器を用いた服薬指導を行うのに十分な体制が整備されている」ことが条件。同様に月1回のみの算定だ。

今回、全くの予想外だったのが、「ニコチン依存症管理料」算定について、1回目は「対面」診療が原則だが、2回目から4回目まではオンライン診療の報酬が新設されたこと。従来、「禁煙外来」に力を注いでいた医療機関は、「オンライン禁煙外来」開設が可能になる。若く日常は元気な患者が多いことから、とかく治療中断者の多い「禁煙外来」だが、自宅で受診することの利便性を“売り”に「オンライン禁煙外来」開設をホームページ等で広報すれば、患者増に繋がることも期待できる。詳細な届出要件等については、(一部、黒塗りもあり全てが公表されてはいないが)「短冊」をご参照頂きたい。

そして、がん患者の「治療と仕事の両立」を推進すべく2018年度診療報酬改定で新設された「療養・就労両立支援指導料」について、対象疾患ががんの他に脳卒中、肝疾患及び指定難病が追加されたことも重要だ。この改正により、多くの脳卒中の後遺症や難病等を抱える方々の就労支援に役立つことを考えると、非常に意義のある改正ポイント。できるだけ多くの医療機関に算定して欲しいとも感じる報酬項目だ。この改正に伴い「相談体制充実加算」が廃止されたが、同加算で求められる要件は、多分、同指導料の要件に組みこまれ、報酬が更に引き上げられると予想する。

(医療ジャーナリスト:冨井 淑夫)