医師引き上げによる地域医療崩壊を懸念する声に対応

 2024年4月から始まる医師の時間外労働(休日労働を含む)の上限規制で焦点となっていた副業・兼業の扱いについて、厚生労働省の「医師の働き方改革の推進に関する検討会」は9月末に開いた会合で、派遣元の大学病院などを新たにB水準の対象に追加することを決めた。今回の決定内容を議論の背景なども交えて、以下に概説する。

 医師の時間外労働は24年4月以降、原則年960時間までに制限されるが(=A水準)、地域医療の提供や、多くの症例を経験しなければならない初期研修や専門医研修に支障が出ることがないよう、年1,860時間までの時間外労働を特例的に認める「地域医療確保暫定特例水準(B水準)」と「集中的技能向上水準(C水準)」も別途設定。原則水準よりも長い時間外労働を容認する代わりに、B、C水準の指定を受けた医療機関には、年960時間を超える時間外労働に従事する医師に対する連続勤務間制限や勤務間インターバル、代償休息の確保といった「追加的健康確保措置」の履行が義務として課される。

 一方、労働基準法は副業・兼業をする労働者について、労働時間を通算して時間外労働の上限規制への該当・非該当を判断すると定めており、医師にも適用される。厚労省研究班が行った調査によると、副業・兼業をする大学病院勤務医の時間外労働は、主たる勤務先の大学病院単体では、全体の76.2%がA水準の範囲内に収まる。ところが、兼業先の労働時間と通算すると、全体の23.3%がA水準を超える(図表1)。

当然ながらこれら医師には「追加的健康確保措置」の実施が必要になるが、主たる勤務先がB、C水準医療機関の申請を行わない場合は、時間外労働が年960時間内に収まるように兼業を禁じる恐れがあるのではないかとの懸念が広がっていた。医師不足が深刻な地方の医療機関では、医師の確保を大学病院などからの派遣に頼らざるを得ない事情があるからだ。

医師派遣だけでB水準適用の場合、36協定上の上限は960時間に

 このため、厚労省は改善策として、B水準の対象類型に新たに「医師の派遣を通じて、地域の医療提供体制を確保するために必要な役割を担う医療機関」を追加することを、検討会に提案し、大筋で了承された(図表2)。医局の指示や要請で大学病院から関連病院などに医師を派遣するケースや、地域医療支援病院から医師の少ない医療機関に医師を派遣するケースなどを想定しており、対象類型に該当するかどうかは、医療機関の申請に基づく指定プロセスの中で、都道府県知事が判断する。

ただし、常勤勤務先ではA水準が適用される業務に従事しているにもかかわらず、副業・兼業を理由に、36協定が緩和されるのは望ましくないことから、この類型への適用だけでB水準の指定を受けた場合の個々の医療機関における36協定上の時間外労働の上限は、年960時間までとする。

 また、「医師労働時間短縮計画」との関係については、B水準の指定申請を行う常勤勤務先に計画の策定を求め、▽自院における労働時間短縮に可能な限り取り組む▽関連病院への派遣など、副業・兼業先における当該医師の勤務態様を一定程度管理可能な場合は、シフト調整などによるトータルでの労働時間の短縮を図る▽関連病院以外の場合も、副業・兼業先に対して労働時間短縮の協力を要請する―と整理した。